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宿屋四郎兵衛
「ずばり!単刀直言」
(2007.6.20〜2009.5.20)

No. 6
これじゃ景気は良くなるまい。

“新テロ特措法”の怪
 参院議員選挙で民意が反自民と出て、いわゆる“ねじれ国会”現象が続いている。この事態にどう対処すべきか、右往左往した安倍政権は、肝心のインド洋給油活動継続を国会に諮ることも忘れて、内閣続投に腐心、結果的にすべてを投げ出してしまう。
 後継の福田政権もどちらかといえば“立ち往生”気味で、野党、分けても民主の袖引きに余念がない。「さる人」の口利きで民主との大連合を持ちかける奇策を採るも、小澤党首のドタバタがあったとはいえ、総合判定は福田政権にマイナスの評価。
 “新テロ特措法”を例の一手で衆院可決、アメリカ詣での引き出物として間に合ったものの、ブッシュ大統領始め米政府筋はそれほどの歓迎ぶりでもなかったようだ。インド洋の自衛隊活動をそれほど評価しているようにも思えない。
 自民党挙げての給油活動継続大合唱もなんだか宙ぶらりんに終わりそう。世論調査では、継続支持が不支持を若干上回るようだが、米国にとっては「もうどうでもよさそう」な感じが透けて見える。
 自民党の首脳は、事あるごとに“民主からの対案”がないことを強調するが、普通に考えれば“寿限無”まがいの長ったらしい法律は期限が来て、廃止となって当然ではないのか。
 なぜ継続することが「国際貢献」に繋がるのか判然しない。給油活動によって自民党がどんな利益を得ることになるのか。守谷前事務次官の贈収賄疑惑もあり、自民党にとってこの法案ゴリ押しは、決して得策とは思えない。
 廃案の公算大と見る。

消費税率アップの大合唱
 自民党政権の考えが“変だな”と思う理由に消費税・増税問題がある。
 福田政権の柱をなす政府首脳、党幹部がいずれも旧大蔵省出身者で占められているということもあろう。伊吹幹事長、谷垣政調会長、町村官房長官、額賀財務相はじめ派閥の領袖(古色蒼然たる存在)の多くが、増税論者で鳴る与謝野党財政改革委員長に共鳴して増税に意欲を示している。
 内閣府はすでに経済諮問会議で現在の医療・介護給付の水準を維持するには、2025年度に約14兆円〜31兆円の増税が必要となり、消費税で賄うなら11〜17%まで税率を引き上げる必要がある、との試算を出している。
 要は、社会保障とのセットで消費税アップを図ることで国民の理解を得たい意向のようだ。
 福田首相は、衆院の解散・総選挙を意識してか、来年度の消費増税は論議する段階ではないと言い切っているものの、選挙後には必ず消費税率引き上げを核とした税制改革が進められる方向だ。
 衆院選挙にとって決して有利とはならない増税論議を振り上げる自民党の意図はどこにあるのだろうか。防衛族の大疑獄事件に発展しそうな守谷・宮崎疑惑、数々の厚生労働省の言うに言われぬ不信のオンパレード、すべてを国民に忘れさせてしまおうとの魂胆か。

衆院過半の現状は維持
 自民党の戦略は、参院は今後6年間野党優位の大勢を替えることはできない、それならば衆院の圧倒的優位は維持したい、にあるのではないか。
来春、もしくは洞爺湖サミット前後との解散時期予測とは別に、あるいは首相が大権を発動せずに済む期限一杯引き伸ばす作戦と見る。可能な限り粘り抜く、そこに福田総理の真骨頂があろう。
 「生活第一」を標榜する民主党の路線、その政策には、自公をはじめ共産党、社民党からも批判は相次ぐ。とはいえ、民主党議員の政策分析、立案力は他を圧している。先行き不安感を払拭できない多くの国民にとっては、民主党議員の動きはまさに救世主に見えるかも知れない。
 急性心筋梗塞のお蔭で平素お目にかかれない国会中継や「ワイドショー」なるものに病院でしっかりお世話になっている。
 質問に立つ自公議員各位と民主党議員のそれとの格差は比較のしようもない。
 調査しようにも官公庁頼みの自民議員では、質問も空疎とならざるを得ないか。やたら時間を空費するのみと感じられ、心臓に大きな負担となってしまう。数合わせの、いわゆる陣笠議員ともなればうかつに解散などできない相談だ。
 福田政権下、初の民意を問うこととなった大阪市長選挙は、やはり民主党支持候補が選ばれた。継続意味が明確でないインド洋給油にこだわり、消費増税を政権課題とする自公連立政権に当面、勝ち目はない。

景気の先行きに暗雲
 福田政権は、なぜ国民生活に興味を示さないのか、不思議だ。景気は良くなっているとの前提で政策運営を行っているようだ。
 安倍政権が悩みぬいた「格差是正」問題、大企業と中小企業、中央と地方、正規社員と非正規社員問題など数多くの格差是正が、自公連立政権の参院選惨敗後、喫緊の政策課題ではなかったか。また、年金問題についての認識も極めて薄弱だ。麻生総裁候補との間で繰り広げた意欲は他人事か。
 増田総務相、舛添厚労相への丸投げで、すべてを任せているのか。しかし、舛添大臣の発言が示しているように、彼が一生懸命に叫んだところで事態が良くなりそうな形跡は表われない。民主の攻勢でさらに支持率を落としそうな気配だ。
 米国のサブプライムローン問題もどこまで世界経済を後退させるのか、依然不透明だ。
 原油価格の高騰も実勢価格を反映していないだけに、今後の予測などよほどの識者ですら不可能だ。
 年末を控えて株安傾向も不気味、さらにドル安の流れも定着しつつある。中国経済の高成長はなお続くと思われるものの、目前の北京五輪から上海万博後の懸念は想像を遥かに超えたものとなりそうだ。
 中国の吐き出す環境汚染は、日本中を震撼させた公害問題の再来となるであろうし、また、防ぎようもない。

中小企業の厳しさを甘く見るな
 今は、戦後最長の景気拡大局面にあると言われて久しい。多くの景気指標も景気の高止まり懸念はあるにしても、下り坂を示すには至っていない。
 しかし、依然として中小企業の景況感は予断を許すものではないのだ。雇用の7割を担う中小企業の景況感は一貫して改善せず、多くの従業員は「好景気の実感を持てない」ままきている。大企業が回復すれば、それが中小企業にいずれ波及するとの仮説は成り立っていない。
 「燃料と材料の価格は上がったのに、工賃は同業者でたたき合い。景気回復というのは大手だけの話」、が実感ではないか。原油価格高騰は、これに拍車をかけていく。ガソリン価格の値上げが、これから景気にどれだけの影響を及ぼすのか。
 今回の景気回復が輸出主導であったために、内需に依存する中小企業に恩恵が広がり難いとはかねて主張されてきた。個人消費や地域経済浮上に大きな役割を果たす中小企業に景気の回復が及ばないまま、景気が下り坂を迎える可能性が高い。
 そんな中での、消費者心理を逆なでするような政府・自公連立政権の意図はどこにあるのか。このまま「格差」問題を放置し、社会保障の見返りに消費増税を核とした増税政策を推し進めるのであろうか。
 「国際貢献」や「財政破綻」論など“政権与党”意識の強い傲慢政策より、今は国民生活の安定を図ることが優先されるべきではないか。
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2007/12/1掲載
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