今塾 by 今宿博史 - 営業戦略おもてなしショップ - IMAJUKU by IMASHUKU Hiroshi
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宿屋四郎兵衛
「ずばり!単刀直言」
(2007.6.20〜2009.5.20)

No. 7
“現場力”に欠かせないコンプライアンス(法令遵守)知識

 平成19年の「流行語大賞」には選ばれなかったとはいえ、法律関連用語でありながら新聞、テレビ等のマスコミで今年盛んに取り上げられたコンプライアンスについて改めて整理しておきたい。

コンプライアンスとは?
 最近はやたらとこんなカタカナ言葉が飛び交い、話が良く見えないと顰蹙を買うことも決して稀ではない。
 とはいえ、この「直言」シリーズの前の「パワフル」シリーズでも取り上げたこともあり、読者の皆さんには既に馴染のある言葉ではないか。さらに、最近の食品メーカーや有名な老舗で続発する「賞味期限切れ」等のトラブルが大きくマスコミを賑わしたこともあり、企業にとって無視できない用語である。
 コンプライアンス、一般には「法令遵守」と訳され、
より広い概念としては、社会通念上のルールやモラルを遵守する「社会常識」を指す。
 横領、背任、セクハラ、インサイダー取引等の企業不祥事は、枚挙に遑が無い。これらは告訴、告発により通常は、損害賠償請求、株主代表者訴訟等に発展する。企業の存亡にかかわる大問題に至ったケースも数多い。
 中小企業でも、法令や社内ルールを遵守することと理解すべきでしょう。

コンプライアンス根拠法
 コンプライアンスの根拠法となるのが、
「会社法」(平成18年5月施行)であり、「金融商品取引法」(平成19年施工。証券取引法の一部改正法で、日本版SOX法とも)である。
会社法は、内部体制構築、金融商品取引法は、財務報告を正確に伝える体制構築を目的とする法律である。
CSR(コーポレート・ソシアル・レスポンシビリティ)とは?
 企業の「社会的責任」と訳される。企業は利益追求することが目的ではなく、社会の構成員として国民の福祉、健康にも貢献すべきとする考え方である。
 多くの大企業では、CSR行動基準の策定やCSR室を社長直轄に設置する、またステークホルダー(顧客、株主、取引先、社員等利害関係者)にはCSRレポートを作成配布、などが実施されている。
 中小企業にとってもCSRは無縁ではなく、社会的信用の失墜が会社の存続を危うくするとの認識を持つべきであろう。

コーポレートガバナンスとは?
 「企業統治」のこと。ステークホルダーによって企業が指揮され、統制されること。
 このコーポレートガバナンスは主として「会社法」に準拠する。
(1)機関の分化
株主総会、取締役会、監査役といった機関が分化し、相互監視・監督機能を発揮する。
(2)取締役の会社に対する責任、第三者に対する責任
取締役が管理者としての注意義務に違反し会社に損害を与えた場合、損害賠償責任を負う(会社法330条)。取締役が職務を行うについて悪意または重大な過失のあった時は第三者に対しても責任を負う(同法429条)。
(3)株主代表訴訟
同法847条は、取締役としての任務懈怠があった場合、将来会社に対して損害の賠償を行う必要が生じる。

日本版SOX法とは?
2006年6月成立の金融商品取引法(改正商品取引法)のこと。
(1)投資性の強い金融商品の取引を対象とする規制強化
(2)開示規制の強化 
の二本柱からなる。
 開示規制に関連しての「財務報告に係る内部統制報告書の提出義務化」に着目して、この法律を通称「日本版SOX法」(企業改革法)と呼ぶ。
 この法律は、1990年代末から2000年初頭にかけて米国で多発した不正会計問題に対処するために、財務報告の透明性・正確性を高めることを目的にした米国連邦法であり、法案を議会に提出した議員の名前から「サーベンス・オクスリー法」と呼ばれる。
 日本では、2003年4月の改正商法の中で、内部統制システム構築義務化の流れが出来上がり、
2005年5月の会社法施行で、大会社に対して内部統制システム整備が義務化された。
経済グローバル化の典型的事例の一つである。

新「会社法」とは?
 2006年5月施行の新「会社法」が中小企業に与える影響は大きい。旧来の商法からの改正点は、
(1)株式会社と有限会社の一本化
(2)会社設立手続きの簡素化(最低資本金規制の撤廃、類似商号規制の撤廃、設立登記の「払込保管証明」不要等)
(3)取締役・監査役等の機関設計の柔軟化
(4)会計参与制度の創設 等 がある。

次に、コンプライアンスやコーポレートガバナンスに関連して、中小企業者にとって注意すべきポイントとして、セクハラ行為と暴力団の関与を指摘したい。

セクハラ行為?
 セクシャル・ハラスメントのこと。「性的嫌がらせ」と呼ばれる。
 言葉によるもの(デートの執拗な誘い、性的質問、発言)、視覚によるもの(ヌード写真を見せる)、文書によるもの(わいせつ文書を読ませる)等がある。
 男女雇用機会均等法は、性的言動により女性労働者の就業環境が害されることのないよう、事業者に雇用管理上の配慮を求めている(同法21条1項)。
 セクハラ行為を行った者は、相手方に対して不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うことになる。
 セクハラの態様によっては刑法の強制猥褻罪として処罰、名誉毀損罪を構成することもある。
 事業主は、使用者責任(同法715条)を負う。
 事業者に求められる「雇用管理上の配慮」とは、
(1)セクハラ防止のための行動規範の周知と啓蒙
(2)苦情・対応窓口の設置
(3)就業規則に基づく制裁の発動、など。

暴力団の関与?
 暴力団から例えば、「みかじめ」料を要求されるような事態は飲食業にしか存在しないようであるが、さりとて中小企業にとって油断することはできない。十分に留意すべき問題ではある。 
当然、コンプライアンス以前のことであり、きっぱり拒絶する。また、執拗なケースは所轄警察署暴力団対策課に相談しなければならない。

インターネット取引規制
今後拡大の見込まれるネット販売についても「コンプライアンス」上の注意が必要だ。
問屋街においても今後本格的に取り組む必要が生じてくるであろうことが予測される。それだけにこの問題は明年度以降、詳細をこの「直言」シリーズで積極的に取り上げていきたいと考えている。
 ネット取引は、対面販売ではなく、取引条件を事前に書面で確認しない特殊性を前提としたビジネスであるために、従来の法律に対する規制緩和などの法改正は頻繁に行われている。
 ネットショップの商品販売、ソフトウエアのダウンロードなどは特定商取引法にいう「通信販売」として規制される。
基本となるところは、
(1)広告および商品内容の表示義務
(2)書面による承諾通知義務、ただし、速やかに商品発送をもって承諾通知に代えることもできる。
(3)虚偽広告、誇大広告の禁止
(4)その他の法規制
景品表示法(不当景品類および不当表示防止法)、証券取引法、不正競争防止法の規制、業法上の許認可・規制もある。
 経営者としては、一応承知しておく必要があろう。
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2007/12/20掲載
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