|
|
宿屋四郎兵衛
「辛口ワンポイント」
(2003.9.1〜2005.4.20)
|
No. 13 |
“27ヶ月ぶりプラス“
回復は、本物かも知れない。そんな期待を抱かせる数字ではある。数字なんて下がれば何時かは上がるもの、とは言いながら、やはり、多少の興奮は禁じえない。いよいよ来たのか?である。
日本百貨店協会の発表によると、2月の東京地区百貨店の売上高が対前年同月比0・3%増、と27ヶ月ぶりにプラスになった。「気温の上昇で季節需要が盛り上がり、閏年で営業日数も増え、更に日曜日が前年より1日多かったことも大きい」とのコメントはあるが、“やはり!”回復局面か、の思いは強い。
不振を極めていた衣料品の回復も目立つ。5%台の伸びは、01年9月の6・2%増以来の高水準、改装や大型セールの効果に加え、春物の動きも目立った。落ち込むだけ落ち込んだ反動とはいえ、紳士服の6・4%は立派。子供服の3・2%も久々ではある。
メンズは、コート、ジャケットなどのカジュアルものが、レディスはヤングのスプリングコート、ニット、カットソーなど。また、婦人靴、ハンドバッグの動きも良く、化粧品なども伸びた。食料品は引き続きのプラスと、好調を持続。
ただ、ここ数年、冬物のバーゲンが1月に移ってしまい、2月は春物の需要期となってきていることが好調の背景、との見方もある。その分、3月が苦戦することになる、との分析である。果たして、今年はどうか。
GDP年率7%成長
政府の「回復、回復」の掛け声に疑問符が投げかけられていた2月、発表された昨10〜12月期の実質成長率が、なんと、バブル期以来、13年半ぶりの高い伸びとなった。10年以上に亘る長期停滞からの脱出か、と騒がれたことは記憶に新しい。
政府の「3月・月例経済報告」の基調判断は、「景気は着実な回復を続けている」であり、個人消費は「持ち直している」と上方修正されている。地方経済の疲弊ぶりに、とても回復のカケラも見られないとする指摘や、今回の景気回復がリストラによる一部の大企業中心の収益回復によるものだ、あるいは輸出企業に限られた回復だ、との批判も数多い。
しかし、厳しいとは云いながら消費者は、何か別の“匂い“を嗅ぎ取っているのかも知れない。そんな予感はする。発表されている家計調査の1月の実質消費支出は、前年同月比1・3%増と3ヶ月連続の増加、さらに、個人向け店頭販売は好調で、小売業販売額は1・3%増となっている。消費総合指数は、昨秋以来上昇傾向にある。
そんな中での百貨店の数字だけに、いよいよとの手応えが感じられるところである。チエーンストアの数字が未発表の段階だけに、軽々には言えないが確かに“流れ”は変わりつつある。
“流れ”に乗れるのか?
要は、この“流れ”に各企業が上手く、遅れることなく、乗れているのかどうか、である。不景気、景気後退期の後、景気が上昇に転じる時が、実は、企業にとっての最も過酷な時、といえる。一斉に世の中が走り始めた時、それに付いていける体力が、残されているのかどうかが問題である。一気に振るい落とされてしまう可能性が高い。自社にどれだけ体力が温存されているのか、早急に検証するべきであろう。
“体力“はあるか
体力とは、一般的には、売上高、経常利益高、そしてスリムでリスクに耐えられる経費構造を指す。しかし、最も大切なこと、体力が残っているかどうかの判定は、固定客をどれだけこの逆境時に守りきることが出来たかどうか、に懸かる。このことは全ての企業に共通する課題である。固定客の多くを失った企業に“流れ”に乗れるチャンスは無いのである。
今回の一見、「景気回復」とも見える消費者の“空気”は決して長くは続かない、と断言出来る。それは日銀の調査でも明らかなように、「伸びぬ所得、家計疲弊」であるからだ。
顧客、固定客に対して万全の対策を立てるべき時である。「当社、当店のお客様」をしっかり守り、流失を防ぐこと。一般論で行動せず、自社の存在意義に明確に応える時、である。 |
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2004/3/20掲載 |
|
|