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宿屋四郎兵衛
「辛口ワンポイント」
(2003.9.1〜2005.4.20)
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No. 20 |
小売業の原点に返れ
商店街が力を落としてきた原因の多くは小売店個々の「仕入力の弱さ」に起因するのではないか。この現象は一部の業種に限定されたことではなく、全ての業種に共通することである。何故か?ズバリ、問屋の力が衰えたためである。日本の経済構造、別けても流通業においては、古来、問屋のネットワークが小売業に比し遙に高度に進展しており、小売業は、店さえ出せれば、後は問屋に面倒を見て貰うことで“いっぱしの”小売業としての成功も可能であった。
無責任な“問屋無用論”で問屋が衰退した訳ではないが、製造業(メーカー)と小売業の力が強まるにつれ、中間組織としての問屋の存在が、経済構造の中で近代化を阻むものとしての誤った認識を持たれるようになったことは事実であろう。また、多くの問屋自身も自らの使命を声高に叫ぶことなく(勿論、今日、堂々たる問屋も数多く存在しているが)、恰も“宿命“であるかのごとく安易に受け止めてしまったということもあろう。
小売業の多くは、時代の流れだけに、問屋が無くなってもメーカーや大型小売店が自分を助けて呉れる、あるいは行政が面倒見てくれるに違いない、と思ったのかも知れない。また、日本は、慢性の超供給過剰国、問屋など無くなっても何処からでも「買ってください」と売り込みに来る筈、とタカを括っていたのか。残念乍、今日の状況は、問屋の衰退と共に商店街を構成してきた中小小売店自体が危機に立たされているのである。今や、
仕入れにこそ小売業の原点があることをしっかり認識すべき時ではないか。まさに「利は元にあり」なのである。
お客さんのために“購買代行”すること
中小小売店にとって経営を維持し、お客様の満足を得続けるためには、強力な“サポーター”としての仕入れルート、即ち問屋が無くてはならないのである。小売店は、
(1) 基幹商品の仕入れルートを持っていること
(2) 新しい商品を何時も紹介してくれるルートを開拓しておく
(3)“旬”の商品仕入れに必須のルートがある
(3) 催事商品の仕入れルートをおさえている
など問屋の“得て、不得手”を見極め、問屋を使いこなすことが大切。決して「野菜を仕入れるのに、便利だからといって行きつけの魚屋で間に合わせてはいけない」のである。
小売店自身、努力せずに、つい、何時も来る問屋・商社の外交さんに仕入れを任せてしまうことなどあってはならないのである。確かに、最初は、便利には違いない。しかし、そのことが時間の経過と共に偏った品揃えとなり、また、お客様の要望とのズレとなっていくのである。自然とお客さんが離れていく構図である。
今のお客さん、大抵のものは持っている。それだけに、極端に言えば自分の欲しいものが判らないのである。このお客さんには「この商品がお似合い」と自信を持ってお勧めする。言うならば、小売店は、“メーカーの販売代行”ではなくて、“お客様の購買代行”の立場に立たなくてはならない、のである。お客様に代わって仕入れすることである。
多くの商店街が、大規模店に圧倒されてしまうのは、大規模店と同じ目線でお客様に接しているからである。これが衰退の一因となっている。
問屋街こそ中小小売店の生命線である
商店街の小売店が、大規模店・チエーン店と同じ目線でお客を見、同じルートでものを仕入れて、まず、勝てる訳はない。価格競争力、人材、スピード、コスト、海外商品開発力、物流力、資金力、どれをとってもおよそ手に負えるものではない。格差は歴然、更に拡大していく。
しかし、どんな力にも必ず死角はあるもの。“小、よく大を制す”の例え通り“小”は、小なりの戦略に徹することである。
大規模店はあくまで不特定多数の品揃えしか出来ない、しかし、地域密着の小売店は、お客さん1人のための品揃えが可能なのである。このことは、直近の現象として、
(1)GMSの衣料品売り場の不振・伸び悩み現象
(2)百貨店の「個人外商」返り現象
(3)繁盛店の共通点は「地域密着」にある
など、多くの事例を挙げることが出来る。
小売店は、今こそ自分のお客さんを、しっかり見つめて欲しい。そして、大規模店・チエーン店のMDとは一味異なる、1人のお客様のための品揃えルートを持つことである。
幸い、問屋街は健在である。本当に小売店が必要とする“購買代行”のための適品が、適時、適量に仕入れられるのである。また、常に新しい商品の流れ、動きに接することが出来る。これは東京ならではのことであろう。週に一度は、あるいは、最低でも月に一度は、問屋街を歩き商品をチェックしておく、あのお客さんに次の提案が出来るはずである。 |
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2004/7/1掲載 |
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