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日本繊維新聞(ニッセン)投稿集
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4. 2008.09.08
「データを“血肉”に 収集だけでは“金”は取れず」 |
田淵コーチがTVで豪語していた。日本のデータ収集は完璧だ。スコアラーの皆さんの努力には頭が下がるね、各国すべてを回ってそのデータ量はすごいよ。しかし待てよ、星野、田淵、山本の首脳陣に果たしてこれらの膨大なデータが読み取れるのか。この首脳陣に危うさはないのか。
この3人、現役時代はもちろん監督時代でもデータ駆使の緻密な野球とは程遠い存在ではなかったか。持ち前の天性の才能を生かし、苦労することなく思う存分投げ、打ちまくることで一流の座を獲得してきた選手達ではないか。監督時代はといえば、つねに有能なコーチが付いて適切にデータを読み解き、彼らを補佐してきたのではなかったか。それらのデータを采配に活かしたことがあったかはいささか心もとない。
宿敵米国を倒したソフトボール・チームの快挙はまことに快いものであった。上野投手に国民栄誉賞の声もあったほど国民に多くの感動を与えた。このチームは「斎藤ジャパン」とは言わない。スポーツは選手が主役であって、決して監督が主役ではないのだ。
企業体質を変えることは、データを社員の“血と肉に”植えつけること
ソフトボール・チームのデータ収集・分析、対米国作戦はアテネ後から始まっていたという。もちろん、このチームにも有能なスコアラーがいただろうが、選手達自身が自ら相手選手のクセ、弱点などを徹底的に分析し、ディスカッションし続けてきたことを窺わせる発言に改めて瞠目する。データが、チームの、そして選手達の“血肉”になっているのだ。上野投手からベンチ入りの選手全員、まさに一丸となって目標に向かって行動している。そこには迷いはない。自分たちが収集したデータであり、皆で編み出した戦法であるからだ。
企業体質を変えるということは、まさにこのソフトボール・ジャパンのことではないか。アパレル企業がいくら高額のデザイナーやコンサルタントに依頼し、あるいは著名ファンド会社の傘下に入ろうと、結局はそのことが全社員の“血肉”とならない限り単なるムダ金となってしまう。いくら見事に当該企業を豊富なデータで分析してみせて、すばらしいチャート、マイルストーンを提示しても、そのことで企業を再生することはできない。投資を成果に変えるのは、日々の社員一人一人の工夫・努力の積み上げ以外にはない。
野球・ジャパンは、豊富なデータを紙屑にして終った。データは、プロ選手達の“血肉”とはならなかった。 |
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