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日本繊維新聞(ニッセン)投稿集
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10. 2009.03.16
「『あなたの会社潰されますよ!』銀行もファンドも自社利益優先」 |
“銀行関係者の方はご遠慮ください“との但し書きの付いた『銀行員の言うことをハイハイ聞いていたら、あなたの会社、潰されますよ!』(すばる舎刊)という本が出版されている。
当然ながらまだ読んでいないし、買って読んでみようとも思わない。先日、恵比寿アトレの三省堂書店にかなり積み上げられていた。買う人も結構いるのだろう。「貸し渋り、貸し剥がし、金利引き上げ、追加担保・・・厳しい時代を生きる経営者のための金融機関と対等に渡り合うために知っておくべき79のツボ」とある。<早くも8万部!!>が売れているらしい。
もはや懐かしい死語ともなった言葉に「当社の主力行は」なんて、よく言ったものだ。あの銀行が主力行である以上、とことん面倒は見てくれる、だから心配はないと続く。ニクソン・ショックから、第1次オイルショックと続いた危機の時代、主力行は主力らしく会社を支えてくれたものだ。しかし、所詮、銀行も企業、いくらよくモノの分かった支店長さんにも限界があることを認識させられたのは、今から思えば米国経済が金融帝国主義に転じた時だ。
ITバブル後、実物経済に見切りをつけた米国は金融経済を軸として、全世界を新自由主義経済(聞こえはいいが)に巻き込んでいく。
銀行もファンドも実物経済とは無縁
間が悪かったと言えば、まさにその通りだ。拡大に拡大を続けたアパレル・ビジネスが、膨れ上がった在庫の処分に四苦八苦し始めた21世紀初頭から、米国の経済政策のターゲットが日本を狙い撃ちしてきた。
グローバリゼーションの名の下に、日本の政治家達もこの言葉を信じ、「輸出大国」を柱とした“いざなぎ越え”の景気回復を信じて疑わなかった。いずれ景気回復が日本全国隅々に行き渡るはずだと。
主力行の多くも、自行の負担を軽くするため経営不振企業の救済に乗り出し、人材も積極的に派遣し始める。アパレル側も悲しいかな、この動きを歓迎した。「良い人材をいただければ業績も回復する」はずだった。しかし、すばらしい人材のすばらしい理論も、所詮「机上の空論」、その会社に根付いた風土まで変えるに至らず、ましてアパレル経営に精通しているわけでもない、結局、「回収すべきものは回収し終えて」主力行は去っていく。
俄かに浮上したファンドの存在も、企業を安く買って、高く売るのがビジネス。不振企業の改革そのものが目的では決してないのだ。
今回の多くの悲劇は、やはりアパレルを知り抜いた経営者が、しっかり経営の舵を取るべきことを教訓として残した。 |
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