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日本繊維新聞(ニッセン)投稿集
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20. 2010.01.19
「目指せ!“ぬくもり”のある百貨店 求めているのはバーゲンではない」 |
百貨店の社会的存在価値は、売上にこだわることではないと主張してきた。
多くの生活者が、百貨店に業態として求めていることは、カリカリと売らんかな!の売場作りや接客姿勢は望まず、まして「低価格を叫ぶ」バーゲンセールのオンパレードではなく、ゆったりと自由に歩き回り、疲れたら上質なソファー(SCにあるような木製のベンチなどではない)一休みができるスペースなのだ。
求める商品も海外で安価・大量に生産され、また一年で処分してしまわなければならないファストファッション商品ではなく、素材・染色・縫製などに十分に手が掛けられており、ディテールに工夫を凝らした国産の“ぬくもり”ある商品だ。もちろん採算度外視というわけにはいかない、百貨店ならではの納得の価格である。
ブランドさえ付いていれば売れた時代ではない。そのブランドが主張する「生活感」が訪れる生活者とマッチすることだ。
都心百貨店で成功するイベントは、例えば、北海道物産展など各地域の特産品・工芸品的なものを集めた催事が目立つ。日本の各地域の持つ物産を掘り起こし、それをまとめ上げる企画力が問われているのだ。お中元、お歳暮、あるいは祝葬祭用品など日本古来の慣行・行事に因んだ地域商品を積極的にマーケティングする能力が問われているのだ。
問われる“上質のマーチャンダイジング”
都心店から地方店まですべて同じ手法で店作りがなされ、また、同じブランド品が他店と同様に整然と並ぶという「モノ真似」マーチャンダイジングでは、1都市に1百貨店あれば十分ということを、百貨店自身が認めていることになる。食料品から衣料品に至るまで、百貨店の包装紙が各ブランドの包装紙に取り換えられてきたことは、単に時代の流れのせいではない。百貨店自身の怠慢そのものと自覚すべきだ。
自店の立ち位置を明確に“ビジョン”として全店員が認識し、安易な全国一律の品揃えを排して、自店ならではの商品開発を徹底すべき時なのだ。業態としての百貨店が斜陽であろうとも、自店のみは生き残っていかねばならない。
建物・施設のリニューアル以上に求められる商品ラインのリニューアルを行わない限り、百貨店に明日はない。来店者へのサービスが問われる以上に、バイヤーによる全国ローラー作戦による商品開発・掘り起こしの優劣が問われているのだ。
従来型流通ルートからの安直な商品確保、売場作りでは、パラダイム変換の競合に勝てるわけがない。安易なネット販売も所詮“敵に塩を送る”結果となりかねまい。 |
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