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日本繊維新聞(ニッセン)投稿集
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23. 2010.04.08
「量販アパレル生存の分かれ目 自社の流儀を確立し貫け」 |
量販店向け大手アパレルの業績不振が目立ち始めた。
量販店の売上げが60%を占めるクロスプラス(株)の10年1月期決算は、その量販店向け売上げが前期比15.3%ダウンし、営業利益は赤字となったと報じられている。量販店平場向けが前期の360億円から285億円と20%落ち込んでいることが、最大の原因だ。ここ数年の量販店向けPBブランド取組み強化や自社ブランドコーナーの展開規模拡大策も平場の落ち込みを支えるには至っていない。
今後も量販店市場を重視し、特に自社ブランドコーナーの出退店に機動力を発揮し、新ブランドの発売等にも力を入れる一方で、コーディネイト提案強化で平場の底上げを図るという。目標はともかく時代の趨勢から見てさらなる落ち込みは避けられまい。
今後は、成長チャネルである大手専門店チェーンに対するODMの強化やTVショッピング、カタログやネット販売等の無店舗販売のウエイトを高めていきたいとしている。また、百貨店へのシフトもPBブランドを柱として拡大を狙いたいところだろう。および腰ながら、各百貨店グループとのトライは始まっている。
委託販売への“独自流儀”を編み出せ
大変失礼な表現になるが、百貨店向けの大手アパレルが衰退に追い込まれていった「いつか来た道」に量販店向け大手アパレルも辿っているのではないか。
平場主力の営業体制で育ってきた社員が、簡単に委託販売の営業活動に方向転換などできるわけはない。長年に亘るバイヤーとの取引慣習からの脱皮は容易ではないということだ。
百貨店販路はもちろんのこと、恐らく現時点での対量販店においてすら、そのPBブランド開発や自社ブランドコーナーへの参入はかなりのリスクを負ったものであるはずだ。基本的に量販店は買取りビジネスだ。アパレル側の委託販売への切り替えの難しさ、厳しさは決して容易に成し得るものではない。残念ながら、徐々に体力を消耗していくことになろう。
成否は、一刻も早い平場ビジネスとの決別だ。平場頼みが企業力を弱めていくことにトップは気付くべきだ。
自社ブランドコーナーで成果を得るには、量販店側の意向を無視してでも、展開店舗数の決定や商品品揃えに主導権を持つこと、目先の売上げに左右されることのない販売計画の立案・実行とテナント料その他の条件交渉で一切の妥協を排することだ。
消費者思考など所詮“蜃気楼”に過ぎない。甘言に乗らず、自社の流儀を貫けるかどうかが、今後の量販アパレル生存の分かれ目となろう。 |
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