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日本繊維新聞(ニッセン)投稿集
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28. 2010.09
「銀座三越は、期待通りの百貨店なのか」 |
本当に「百貨店復活の試金石」足り得る百貨店なのだろうか。MDに伊勢丹流を導入し、海外(特に、中国人富裕層向け)にも誇り得る日本を代表する百貨店が果たして誕生したのだろうか。これが、11日、約5割増床した三越銀座店の印象である。
確かに、銀座松屋、銀座松坂屋を強烈に意識したことは判然するものの、その内容たるや店としてのコンセプトは不明のままだ。というより、考えあぐねている中にオープンの日が来てしまったかの印象が強い。MJ紙(9/12付)報道によると「増床のポイント」は、(1)近隣住民の集客、(2)子ども連れが来やすい店づくり、(3)30〜40代女性の取込み、(4)外国人客への対応、(5)環境対策、(7)公共スペースの確保、にあるという。今までが、売場面積2万3000平方?と狭かっただけに、折角の倍増分を持て余し気味のままのスタートとなった。
「オープン初日、女性客や家族連れなど約2000人が開店を待ちわび、予定より15分早い9時45分に開店した」(上掲紙より)ことは、三越従業員約720人が、8月中旬から人口増加著しい近隣4区の10万戸を1件ずつ訪問したというローラー作戦の成果であったのか。
このことが、日本でも最高立地の銀座に相応しい百貨店作りであったのかは、極めて疑問であると評価しておきたい。
「平場」とは異なる自主編集売場の試練
銀座には、海外の超高級ブランド品店、ユニクロやH&M、ZARA、フォーエバー21等内外の有名ショップがひしめく。いずれもブランド・イメージは強烈だ。その中にあって、ほとんど忘れられた存在になりつつある百貨店(有楽町西武のように存続を諦めた百貨店もある)にとっては、今度の三越増床は業界関係者にとって、新しい可能性を探る「期待の星」ではなかったか、と思う。
従来の「平場」とは、コンセプトの異なるはずの「自主編集売場」への期待も大きい。幸い伊勢丹流MDの導入でどこまでブランドに頼らず、しかも目の肥えた消費者を満足させるだけの売場が作れるのか、ここにも都心百貨店としての威信が懸かっていたはずだ。だが、目立ったのはいずれの編集売場も平凡なブランド・ミックスに止まり、「さすが」と思わせる部分がなかった点に今後の百貨店の限界が垣間見える。
ブランド毎の仕切りや壁を取り外し、回遊性を高めただけで消費者が百貨店に回帰するとはとても思えない店作りに終わってしまった点が惜しまれる。
有楽町西武退店後のマリオンには、JRの「ルミネ」出店が有力と報じられている。百貨店の時代は終焉を迎えるのかも知れない。 |
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