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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 2 |
時代は激しく動く!
“過去の否定“
日本経済新聞から“カリスマバイヤー”との異名を奉られた藤巻幸夫氏が、名門福助の再建半ばにしてヨーカ堂に転じたことはまだ記憶に新しい。藤巻氏ならではの見事な転進ではある。
IYG生活デザイン研究所社長として迎えられてから日は浅いが、すでに専属のスタッフを駆使して、まさに八面六臂の活躍ぶり。“「過去の経験」否定を実践“”藤巻店続々“(繊研新聞)と報じられている。5月24日大宮店、25日は溝口店に手を入れ、また三郷店(24日オープン)も藤巻チームの意向を汲んだ新店という。新商品の登場は下期以降になるというが、ゾーニング、POP、陳列・照明、什器などあらゆる面で「過去を否定」しているとの評価だ。
その藤巻氏、この5月26日付きでなんと、ヨーカ堂取締役執行役員衣料事業部長に就任した。それもデザイン研究所に本体の商品企画部などを統合し、名実共に衣料品のトップに立ったのである。もとより藤巻氏の手腕に疑義をさしはさむつもりもないが、伊勢丹、キタムラ、福助のキャリアがヨーカ堂に必要と判断されたのであろう。もちろん、藤巻氏の卓越した人を惹きつける個性もGMS衣料品売場にとって大きな魅力であったはずだ。
一方で、藤巻氏の処遇以上に注目を集めているのは、ここ2年の間でヨーカ堂は取締役衣料事業部長に5人目を迎えたということにある。
GMS店衣料品の苦戦
ダイエーの崩壊、ウォルマートとの提携に走った西友の厳しい再建、一人勝ちと言われながら内実は苦しいジャスコなど。さらに中堅クラスの量販店も含めて衣料品販売はいずれもが苦戦を強いられてすでに久しい。
衣料品販売をルーツとするヨーカ堂。過去はすべての量販店が模範とし、目標としてきた同社だけにその低迷の影響は計り知れないものがある。今後、どのような路線をとるのかが大いに注目されているといっても過言ではあるまい。
今回の人事の特徴は、まさに人にあった。組織、仕組みを重視してきたヨーカ堂にとっては“清水の舞台”ではなかったか。鉄壁の、しかも独特(どの企業もそうであるが)の仕組みを持つ同社に、藤巻流の経営手法(というより、MD政策か)がうまく嵌るのかどうか、正直疑問といえる。
小売業は、日々の繰り返しであり、継続が義務付けられるし、そう簡単に新しい仕組みが、現場に定着するわけでもない。意地悪く言えば、今動いている仕組みは、どの衣料事業部長時代のものなのか、を問わなければなるまい。問題はトップの発した指令、仕組み改変が現場に到着し、現場で実行されるまでに要する時間が問題である。
過去多くの百貨店や量販店でトップの招聘人事が行われた。残念ながら、成功事例は決して多くは無い。むしろ失敗例が多かったと言わざるを得ない。華々しいトップ人事の陰で現場が疲弊してしまったのである。それでもヨーカ堂は、敢えて藤巻氏招聘に踏み切らざるを得ない事情があったのであろう。
コンビニ業界の新風
以前から囁かれていたこととはいえ、ローソンの新業態「ストア100」、
(生鮮百円コンビニ)が誕生した。生鮮品約80品目、相場変動によるリスクはあるが産地の切り替えやパック詰めの量を調整することで税抜き百円は維持、粗利益率20%は確保できる見込みという。
確かに、消費者の便利性から見れば、すでにコンビニで証明されているように巨大な店舗より、絞り込まれた品目で、少量の生鮮が安価で手に入る方が良いに決まっている。かっての定説であった「車社会」の進展による一週間のまとめ買いの時代ではないのだ。
百貨店の売上高を凌駕する勢いのコンビニ業界でさえ、新しい業態開発なしに更なる発展は望み得ない時代なのだ。ヨーカ堂鈴木会長のGMS衣料回復・発展への並々ならぬ執念がリスク覚悟の人事断行となったと言える。単なる人事刷新ではなく、衣料品販売における「生鮮百円コンビニ」のような新業態を生み出したいとの想いからの人事と受け止めたい。
何が出てきてもおかしくない時代である。それだけに、問屋街の維持・拡大には従来の現金問屋の仕組みが持つ利点を活かした新業態が現われても決しておかしくはないし、問屋街自身で受け入れるだけの環境を用意するべきではないか。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2005/6/1掲載 |
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