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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 4 |
会社の体質を“骨太”に!
潮の流れが変わった?
景気が足踏み状態に入って、1年が経過する。依然として、全体としての景気浮揚は明確ではないし、ましてや政府が言うほどの踊り場から拡大局面を迎えているとは言い難い。しかし、いくらかの明るさが見え始めたとの感触を持たれている経営者も決して少なくはない。
内閣府が実施している「景気ウォッチャー調査」では、街角の景気感を調べるために、コンビニの店長やタクシーの運転手を対象にしているが、先日ある人に面白い話を聞いた。
それは、新聞代金を集金する人の感触だ。銀行振込みがこれだけ普及している時代に、どういうわけか“大”新聞の集金は依然として人手に頼っているところが可笑しいのだが、それはさておき「新聞を取っている人の支払いに変化が見られる」というのだ。
何度も足を運ぶ、それでも集金できずに苦心惨憺していたここ数年と異なり、今年の1月頃から月を追う毎に集金実績が上がってきているというのだ。理由は、当然のごとく不明だ。それぞれの家庭を構成する家族(夫や妻、あるいは娘・息子さん)に何らかの環境の変化があった結果であろう。景気とは関係ないとも言える。しかし、何かが違う、変わってきたという感触だ。
百貨店やGMS、さらには有力専門店の数字が際立って改善してきているとの話は聞かない。むしろ、傾向としては“微減”の流れにあると言えるだろう。しかし、日本経済を苦しめてきた「設備、雇用、債務」の三つの過剰が、解消に向かいつつあることは間違いがない。
景気観とは別に、多くの企業が何らかの方向へと動き始めているのだ。
雇用面からの変化の波
高校生の新卒採用の流れも、急激ではないものの明らかに求人数が増加している。何時の間にか“水かさが増していた”との感じだ。就職希望者の全員合格に自信を持つ高校も少なくない。少子化ですから、との評を甘んじて受け入れたとしても、企業の姿勢は明快だ。採用に本腰が入ってきた。
データも、「パート化の流れ」が一服、またこれを背景にして1〜3月期の名目賃金は、2四半期連続の下げ止まりを示している。「企業が設備投資を拡大し、生産能力をアップすることで個人消費を増加させる」という“内需主導の自律的回復”のシナリオが実現しつつあるのだ、との見方も出始めている。
「景気回復→雇用情勢の改善→新卒採用増」というのが過去のパターンであったとすると、今回は単一方式ではなく、これに中途採用増、パート・アルバイト、派遣社員増もパラレルに進行しよう。このカクテル化が、企業経営に“新たなる危機をもたらす”との懸念を持つべきではないか。
多くの中堅企業、中小企業における人事管理面(サービス残業、勤怠管理、就業規則等)や人事評価制度は脆弱であるといわざるを得ない。ましてここ数年の管理状態は、多くの人材の流出等もあり、退職金問題、年金問題等に根本からじっくり取り組んできたとはいい難い環境下にあった。
人事・財務管理等諸制度の見直しを進める時
有体に言えば、雇用システムが人材の流動化で変わらざるを得ない時だけに、今お使いの「人事管理ソフト」では対応できない、仕組みそのものを見直すべきではないか、という懸念がある。どの企業にも多分リースアップしたソフトが導入されているだろう。あるいは、リース中かもしれない。しかし、これからの変化を予見した時、思い切って新しい仕組みに切り替えるチャンスではないか。あるいは、今後の変化に備えるべく準備に入る時と思われる。
ただし、これは会社の置かれた環境で様々ではあろう。
人事管理面ばかりではない。財務管理においてもその必要性は極めて高い。キャッシュフロー経営の進展、あるいは減損会計処理の必要性、四半期決算の時代も近いと言われている。すでに、中小企業庁は「中小企業の会計 38門38答」で、新しい会計の手法を発表し、その普及に努めているのだ。銀行の再編で「与信管理」の手法も変えていかざるを得ないはずだ。まして税の問題は、今後変わることが予測されている。
従来の仕組みをカスタマイズするだけでの乗り切りには限界があり、危険でもあろう。
過去の延長線上に会社の将来を考えることは極めて危険なのだ。長いバブルの中で、多くのルール、約束事が目に見えない形も含めて変わってしまっていることに注意したい。
従来的景気回復局面ではないだけに、改めて自社のあるべき方向を見直して欲しい。その上での仕組み作りに取り組む勇気を持つべきなのだ。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2005/7/1掲載 |
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