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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 6 |
単品=カテゴリー強化を目指せ
“クールビズ”から学ぶ
本紙7月20日<第1851号>は、「季節衣料好調な動き」ー紳士服関係の健闘が貢献 がトップ記事として取り上げられている。
メンズの6月は、百貨店で前年同月比3.8%増、また、総額で前年割れの続くチェーンストアでもメンズだけは3.6%増と20ヵ月ぶりのプラスとなった。
確かに、今夏の消費動向は、もちろん、業種により跛行性はあるものの、それなりの盛り上がりが感じられる動きではある。「景気は弱さを脱する動きがみられ、緩やかに回復して」おり、消費者マインドの改善が続いているため「個人消費は持ち直している」という6月の内閣府月例経済報告にも頷けるものがある。
一進一退を繰り返しつつ、漸くにして景気は底固めが終わり、実感として上向き局面を迎えていると言えるだろう。しかし、当然のことながらすべての商品に陽が当たっているわけでもなく、また、好調商品を扱いながらも当社だけ“蚊帳の外”という会社もあるはずだ。
“クールビズ”だから、すべてのシャツが売れ、ネクタイが売れないということでもないのだ。夏物商戦の結果が発表される10月以降には関係各社の思わぬ数字で驚かされることになるかもしれない。
今夏の一連の“クールビズ”報道のお蔭で注目すべきことは、一つは久しぶりに「メンズ・ファッション」に話題が集中したこと、二つ目はシャツ、ネクタイという単品衣料が大いに注目されたことにあると思う。「メンズ・ファッション復権」の話題はさておき、シャツ・ネクタイといった単品が景気全体の販売動向を左右するに至ったことは極めて喜ばしいことではないか。
単品軽視品揃えへの警鐘
そもそも、百貨店を中心とした衣料品の販売は、「単品売り」から「コーディネイト販売」方式への流れであり、徐々に百貨店からスカート、ブラウスやセーター、コートなどの単品売場が消えてきたという歴史を持つ。いわゆる、「平場」の縮小現象だ。
今、危機が叫ばれる量販店・GMSの衣料品販売においても、これら単品の販売力が衰えてきたことが最大の原因といえるだろう。既に、食品主体スーパーでの衣料品販売は、ほとんどが撤退を余儀なくされているのが現実だ。
実は、この現象は問屋・卸売業の盛衰とも大いに関係する。
当然のことながら、問屋はすべてカテゴリー毎に生成・発展を遂げてきており、多くの問屋・卸業は単品の扱いで業容を拡大してきたのである。百貨店を主販路としてきたアパレル企業の大手も、百貨店の単品売場への商品供給で社会的評価を高めてきたのであり、量販店衣料の拡大とともに一層の成長を果たしてきたのである。
しかし、百貨店「平場」縮小、GMSの単品売場縮小は、単品「専業問屋」の存在を不要とする事態となった。「専業」に誇りを持つ優良企業の多くがマーケットからのリタイアを余儀なくされるに至ったのである。これに、デフレ価格が追い討ちを掛けたと言えるだろう。
今夏の“クールビズ”騒動、小売店における衣料品の品揃えのあり方、商品の仕入れの手法に多くの警鐘を鳴らしたのではないか。小売店の持つ「単品力」で大きく差がついたはずだからだ。「単品」バイヤーの力も力も見直されているはずだ。
シャツ、ネックタイ等の単品強化の品揃えこそ小売ビジネスの原点と言えるだろう。
カテゴリー強化ビジネス
問屋街活性化にとっても、この「単品重視=カテゴリー強化」の流れは、最も注目しなければならないことである。
問屋街の成り立ちは、当然のごとく「単品」「専業」の仕入先として日本全国の小売店から支持を受けて、その社会的使命を果たしてきたことによる。問屋街を形成する個店、各企業が持つ、単品の「商品力」「企画生産力」「価格形成力」「在庫・フォロー力」といった力の複合があってこそなのである。
百貨店等の小売段階における「単品売場」の消滅・縮小が問屋・卸売業の衰退につながったことは、多くの問屋街がその販売力を減じてきたことにも通じる。全国の商店街を形成する「商店」が単品の販売力を失ってきたことと無縁ではないのである。
“クールビズ”の騒動が衣料品販売の方向を一変させて、すべての流れを逆行させる可能性は、残念ながら決してあるまい。しかし、小売販売の原点が「単品=カテゴリー」にあることを改めて知らしめてくれた事実は噛み締めなければなるまい。
コンビニエンス・ストアやIT関連小売業、中堅・中小のスーパーで好業績を挙げている会社はいくらもあるが、それらの企業に共通することは、「単品」の強さにある。商品開発力、仕入れルート、価格設定などすべてにおいて他社を圧倒することだ。
「カテゴリー=単品」に強い問屋街を目指すことが、個々の卸企業を蘇らせることとなる。 |
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2005/8/1掲載 |
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