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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 20 |
バイイング力強化へ
問屋無用論の論理
いうまでもなく「問屋無用論」の原点は、あの名著「流通革命」(林周二著・昭和37年11月初版・中公新書)にあるであろう。著者は、「序論=流通革命の背景」の中で
(1)“世相の加速化”と
(2)“系(システム)の巨大化”
の二つが流通革命の背景をなす「大きな論理的主題である」と述べている。
同時に、この流通革命を、「のちに経路革命という呼称が用いられる」と指摘していることが大変印象的ではある。
「私は予言してよい。いわゆる流通機構には、近い将来かならず大きな変革が来る。いやこの変革はすでにはじまっている。この変革が完成した暁には、流通機構そのものの国民経済的意義が変革され、販売の社会的意義がまるで変わったものになるであろう。そしてこの変革の意義を自覚した者は栄え、自覚しない者は滅び去るときが近い将来にやってくるであろう」と著者が予言している。
「流通革命=問屋無用論」として、一般的に理解される向きも多かったのも事実ではある。そして、ほぼ著者の予言通り事態は進行した。“世相”そのものが急速に変化してきたし、“系(システム)”の巨大化はその後の量販店の興亡やコンビニエンスストアの隆盛をもたらした。
問屋を取り巻く環境も激変し、問屋の役割自体も変革を迫られるに至ったことは周知の事実である。
流通革命支えた問屋
流通革命の背景をなす二つの論理が、明確に達成された今日、問屋の役割・機能の重要性が改めて見直されるべき時がきたように思われる。
もっとも、「流通革命=問屋無用」と意義付けられながらも、実際に“系(システム)の巨大化”を支え続けてきたものは問屋のバイイング力のお蔭であったことも認識すべきだ。
百貨店問屋、量販店問屋等の存在無くして、これら巨大小売店の発展は望み得なかったと言えるだろう。とくに、新興の量販店業態で、店舗数が急拡大するのを受けて、バイイング力に勝る業種別の専門問屋が育ち、力を蓄え、そしてチェーン店の台所を支えてきたのである。
しかし、量販店・GMSの店舗拡大に終止符が打たれ、もはや量的拡大の必要性がなくなるとともに、力のある優秀な企画力・展開力を持つ問屋も変質せざるを得ない状況を迎える。業種別専門問屋のバイイング力が活かしきれなくなったのだ。
SC時代の問屋
巨大百貨店の支店や地方老舗百貨店が、その店舗運営において支障をきたすに至るのも、百貨店問屋の持つバイイング力を活用できなくなったことが原因といえるだろう。
百貨店の利益の源泉ともいえる平場が削減、消滅していく過程においても商品を供給する問屋のバイイング力を抜きには語れない。本店(東京)主導の商品政策が、結果として支店(地方)の営業力を弱めたのだ。問屋が離れるとともに、地方に根付く支店・老舗が持つバイイング機能が低下、もしくは失われてしまったのだ。
“系(システム)の巨大化”を可能とした問屋のバイイング力が本当の意味で問われるのは、これからの「SC時代」ではないか、と思われる。問屋は、小売を支えるためのバイイング力を自社の事業完結に向けて動き始めているのだ。
“問屋街”のバイイング
ビジネスにおける「強み」とはなんだろう。
<顧客(得意先)からみて、ぜひ購入したい、発注したいという絶対的な魅力ある商品を持つこと>
具体的には、
・世界で注目される商品がある
・他社の追随を許さない低価格、短納期デリバリーが可能
・世界中から商品を調達できる力(人脈、ルート等)を持っている
・他社にない独自の設備を保有している
・優秀なデザイナー、パタンナー、優れたコーディネーターがいる
・サイズ展開に自信がある
など、自社ならではの提案が問屋街全体の提案につながる。これがないからビジネスが成功しないというものでもないが、自社オリジナリティを明確にしておかねばならない。このオリジナリティは「お客を見る目」から生まれる。
問屋街には多くの来街者がある。何の目的で、どこから来街するのか、このことは徹底して洗いなおしておく必要があるはずだ。このことが結果として、お客の要望に応えることであり、問屋街の魅力なのだ。
バイイング力が問われる
いよいよ「商品仕入」の難しい時代に入る。過剰生産時代が終わり、よほどしっかりしたバイイング力を持たないと問屋も小売もやっていけない時代を迎えることになる。
「仕入れルート」を大事にしないと魅力のある商品が手に入らない。努力しなくても売りたい商品が向こうからやって来た、恵まれた時代は終る。
各社は、「オリジナルの品揃え強化」を図るべきだし、少なくとも「自社企画」のウエイトを常時20%位は維持すべきであろう。
バイイングは、「待ち」ではなく「攻め」であることを認識して欲しい。新しい時代のバイイング力が問われている。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2006/3/20掲載 |
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