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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 28 |
改革は地方から
「問屋街の歴史と四十年のあゆみ」から
平成元年(1989)12月20日発行の(協)東京問屋連盟刊「問屋街の歴史と四十年のあゆみ」を見せていただいた。大変に立派な装丁であるとともに内容も豊富で、当時の連盟幹部各位の東京問屋連盟にかける意気込みを十分に感じさせてくれる貴重な記録である。
写真も多く、中でも江戸通り、横山町大通り、新道通りなど、看板のいくつかが代わっているかの印象を受けるものの、18年を経た今日でも大半が「そのまま」である。さすがに、「馬喰町繊維新道通り」の入口に掛かる“東京問屋連盟”の大看板は、去年だったかに撤去されたと記憶するが、新道通りの入口の“体操で活気みなぎる問屋街”は、いまだに瑞瑞しい。
歴史を感じさせる街並みではある。
もちろん古いばかりがいいわけではなく、外見とは別に、この街並みの中にいかに新しい機能が小売店のために付加されてきたのかが問われるところであろう。
「変わらない」ことで、多くの全国の小売店にこの街の信用と安心をもたらし、また「変わること」で多くの新しい小売店を惹きつけ、支援して来たに違いない。
銀行がこの街に寄与したこと
巻末には、組合員をはじめ関係各社の広告が掲載されている。
目に付くところは、「馬喰町支店」「横山町支店」の名前を冠した銀行名の広告である。もちろん、浅草橋支店、堀留支店等の名前もあるものの、その多くが今日、閉店、もしくは銀行名が変更されるに至っている。各銀行の支店が何時、いかなる理由で開店されたのかは定かではないが、当然、この街の発展に寄与すべくオープンしたはずである。
それとも単に、口座数を増やし、融資額や取引額を増加するためだけの目的で開店したのだろうか。いずれにしても銀行が、この街の可能性に賭けたことだけは間違いあるまい。
平成に入ってからの銀行を巡る「金融パニック」、環境の激変は想像に難くない。銀行も大変であったろう。
しかし、銀行の激動は、もろに大企業であろうと中小企業であろうとその企業運営・存続に容赦することなく甚大な影響を及ぼしたことも事実なのだ。まさに、資本の論理である。小泉政治の「業革なくして成長なし」との一刀両断では割り切れぬ強い思いを抱く向きも多いはずだ。
銀行は、この街の発展にいかなる貢献をしたのか。それとも銀行業は、街の発展に寄与しなくていいのだろうか。資本の論理と割り切っていいのか。
銀行に見る論理
ここで改めて銀行業務、あるいは銀行の使命について論ずるつもりはない。有難いことに、銀行といえども企業そのものであり、利の少ないところ、薄いところには極めて冷淡であることは当然、と多くの国民に理解されている。
他のチェーン店同様に、「儲かると判断すれば出店し、儲からなければ撤退する」のである。
銀行も今は、ATMを設置しておけば、大抵が間に合うし、また面倒な振込みなどコンビニがやってくれるのである。経費のかかる支店経営や窓口業務など、無くしていくか、他の業種への丸投げで十分なのだ。
しかし、多くの有力商店街や駅前商店街にとって、銀行の支店の存在は消費者を誘引する上で大きな戦力であったのではなかろうか。また、多くの商店主や街の企業経営者の相談相手として、支店はなくてはならない存在ではなかったのか。極論を言うようではあるが、銀行の支店閉店が、「シャッター通り」増加の引き金になったケースも稀ではあるまい。
都市銀行の多くは、すでに合併・統合が進み、一気に支店数が減少している。統合によるATM等の利用に不便が感じられるもののいずれ慣れてしまうであろうし、都市銀行とは、そういう役割と割り切ればよい。
消費者・生活者にとっては、これからは地方銀行、信用金庫などのより地域密着の金融機関と共に歩む時代といえるだろう。多くの支店網を持つこと、それ自体で企業業績を拡大できる体質を持つ企業がこれからの“勝ち組”になるのではないか。金融機関とて例外ではあるまい。
「しまむら」の躍進と「地方の論理」
コンビニ大手のセブンイレブン等トップ企業は、1万店を擁する規模となって始めてその「規模の利益」を遺憾なく発揮する。商品調達その他のノウハウにおいて、コスト削減の効果が著しく高まっているのだ。
2005年度の「衣料品売上高ランキング」(日経DJ紙)を見ての驚きは、しまむらの業績である。売上高3,629億円、昨対11.2%の伸びである。イトーヨーカ堂が部門別売上高の公表を取りやめたために比較は困難であるが、しまむらが逆転したのではないか、と報じられている。
あの巨大GMSとしまむら、今までとても比較の対象にすらならなかった両社に何が起こっているのか。
ヨーカ堂はさておき、しまむらの強みはその出店力にある。05年度新設店舗数74、なんと閉店店舗数は0、である。「出店パワーランキング」表上位29企業で、閉店0はしまむらのみである。新設店がまるまる売上高に寄与したことになる。強いはずだ。しまむらの店舗数は、期末合計1,071店となった。
このところ専門店の売上高の伸びが高く、前年度との比較が可能な421社でみた伸び率は7.1%。伸び率が前年を上回るのは3年連続となる。
それにしても、しまむら、ファーストリテイリング、青山商事など総じて地方出身の専門店チェーンの高収益体質が際立つ。
これは、地方の論理(常識)で小売店運営のカギとなる「地代・家賃」「人時生産性」「商品調達」等の原理・原則を意思決定し、デフレ対応の低コスト経営を徹底していることに原因があるとみられる。
大都市の常識ではなく、地方の論理が国内の消費マーケットを変えてきているのだ。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2006/7/20掲載 |
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