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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 30 |
“荒天に備えるとき“
全国の企業の99%は中小企業である
中小企業診断士とは、日本唯一の国家資格としての経営コンサルタント集団であり、全国すべての都道府県に支部を擁している。資格取得のための試験は、一次試験、二次試験、実務補習の3段階からなっており、難関で知られている。
多少皮肉っぽく言えば、試験は難関であるが、合格したからといって弁護士や公認会計士のように開業後の事業が国家で保証されているわけでもない。事業として成立つかどうかは、合格した本人の努力次第である。だからというわけでもないが、実際に独立して開業している中小企業診断士より会社に勤めているところの、いわゆる企業内診断士が圧倒的に多いのが現実だ。
もちろん、コンサルティング・ファーム等で働いているコンサルタントもいるものの金融機関など民間企業に勤務している人が大半だ。
2005年度「中小企業白書」によると、04年の全国の中小企業数は、432.6万社(全企業数は433.8万社)に上っている。企業数は、開業率が上向きであるものの廃業率も増加し、中小企業数は年間12万社ずつ減少しているとある。
対する中小企業診断士の総数は、公的機関に勤務する診断士を除くと、1万5千人程度、まして独立診断士となると数千人程度と見られている。とにかく、中小企業数に較べて、診断士の数は比較にならないくらい少ない。数年前に診断協会の新任会長が、「中小企業診断士5万人」構想をぶち上げたことがあったが、国の経済活動の根幹たる中小企業活性化にとって、中小企業診断士の数はあまりにも少ない。
中小企業診断士活用術
難関試験を突破した多くの合格者が、結局は独立することなく勤務先に止まったままでは、中小企業政策上も決して芳しいことではない。
実は、中小企業診断士は経営コンサルタントという性格上、5年毎に資格更新の必要がある。毎年度の「理論政策研修」の受講が義務付けられるとともに、5年間に実際の中小企業指導従事の経験がないと、資格が更新できない仕組みである(18年度より)。
改正で企業内の診断士は、資格維持のために会社勤務の傍ら中小企業指導の経験を重ねることが必須となったのである。そのために、中小企業経営者の方に実務従事機会の提供をお願いする必要が生じてわけである。
周知の通り、中小企業診断士に「企業診断」等の業務依頼を正式に行うと、依頼内容にもよるが数十万から数百万円の実費が必要となる。
しかし、今回の制度改正にともなう「実務従事事業」については、診断士の資格維持が目的であるため、基本的には「無料」で、会社の診断、あるいは会社の個別案件についての提案を行うことができるという内容である。
この制度は、企業内の中小企業診断士だけでなく、中小企業経営者にとっても双方それなりのメリットのある制度なのである。
(診断士の職域という観点からはマイナスだが)
無料診断事業の推進
今回の実務従事事業は、ベテランのコンサルタントが経営指導員となり、原則1班6名編成のチームを組み、1企業6日間のスケジュールで行うことになっている(期間は、連続でも飛び飛びでも、企業側の事情に合わせられる)。
企業内にいる診断士は、コンサルタントとしての経験は浅い、もしくは無いとはいえ、勤務先企業における経験は豊富であり、中堅幹部として活躍中のメンバーが大半であり、仕事のレベルは高い。当然ながら、中小企業診断協会公認の事業となるために、守秘義務は徹底される。
連盟加盟各社の皆さんはもちろん、読者である小売店さんもこの機会にこの制度を大いに活用されることをお勧めしたい。連盟ホームページの「経営無料相談コーナー」からでも、また、連盟の事務局に連絡いただければ、担当の中小企業診断士が個別にお話をお伺いできる。
連盟の加盟各社、あるいはお得意先である小売店さん向けのサービスの一環として、この制度を優先的に活用させていただくつもりである。今日やるべき経営改善、あるいは環境変化を受けての営業活動の一新など具体的に、会社の将来像を考える一助に活用いただければ幸いである。
バブル再来の予感
9月の自民党総裁選、さらに来年の参議院選挙に向けて、世の中、政治一色である。靖国問題も絡めてすべてのメディアは政治・外交問題に掛かりっきり状態にある。
「ゼロ金利政策」の解除がもたらす影響はもちろんのこと、景気の話も含め経済問題のすべてがかすんでしまったかの感がある。唯一の懸念材料である原油価格高騰も、イスラエルの暴挙の前に、大した問題ではないかの印象を与えている。マスコミの力は誠に偉大であると言わざるを得ない。
しかし、よく見えないところで新しい危機の芽は育ち、進行しつつあるのではないか、と思われる。バブルの再来懸念である。
「様々な経済指標が、あの80年代のバブル期に匹敵」し始めているのだ。景気回復の流れは、02年1月を「谷」として、この06年5月で52ヶ月に達し、バブル期の平成景気を抜く戦後2番目の長さとなっている。このまま回復が進むと11月には、戦後最長といわれる「いざなぎ景気」を上回ることになる。
わけても企業業績が好調で、上場各社の半数が、経常利益で89年以降最高益になった。また、バブル崩壊でダメージを受けた金融機関も予想をはるかに越える好業績と財務体質の改善ぶりが伝えられている。地価の上昇気配も、日本経済が新たな転換期に差し掛かったことを示していると考えられる。
もちろん、バブル期と異なり、諸々の諸指標の捉え方や見方も変わっており、あの時点と同じ苦渋を多くの中小企業の経営者が受けることはあるまいと確信する。天気の良くなった今日こそ、次なる危機に備えておくべきではないか。改めて、自社の置かれた環境をチェックしておきたいものだ。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2006/8/20掲載 |
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