今塾 by 今宿博史 - 営業戦略おもてなしショップ - IMAJUKU by IMASHUKU Hiroshi
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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)

No. 43
良いものは売れる、安いものは売れる、安くて良いものはもっと売れる!

●VISTA登場
 マイクロソフト社が新しいOS(基本ソフト)「VISTA」を発売した。機能的には従来の「XP」ソフトで十分に間に合うということもあって、前評判はさることながら以前ほどの騒ぎには至らなかったようだ。新製品の話題より、むしろ同社が旧製品のメンテナンスを何時まで継続してくれるのか、に注目が集まったようだ。
 パソコンの世界にも停滞感が漂う時が来たのかもしれない。ハード面については、すでに必ずしも儲かるビジネスにはなっていないようだ。「ハコ」そのものでは、ほとんど新製品が出尽くした感もある。モバイルを実現するための軽量化や、あるいはファッショナブルな形状、カラー化などを進めることで、2台目3台目を狙う方向に進んでいる。「ハコ」そのもののデザイン合戦の様相だ。
 一方、パソコンに乗せて活用するアプリケーションソフトは、あらゆる分野で開発が進められている。日進月歩、使いやすさを求めて多くの「パッケージソフト」が次々新製品として誕生している。販売業務、在庫管理業務から受発注業務、さらには人事管理ソフト、経理ソフト、税務ソフトなど、いわゆる業務用の汎用ソフトは挙げ出したらきりが無い。使い勝手も良くなり、価格面でもかなりリーズナブルになっている。
 今は、カスタムメード(個々の企業向けオーダーメード)の必要もなく大半の業務は、市販のソフトで十分なのだ。というより、むしろ市販ソフトの方が使い勝手が良く、メンテナンスにもカネがかからない。

●仕事の共通化が進む
 創業、起業に際して
も、業務の基本部分は市販ソフトを導入することでほとんどが解決する。店舗におけるレジ機能
も、高額にはなるが「顧客管理」付きで(使いこなせるかどうかの問題はあるが)至れり尽せりの機種も販売されている。パソコン1台ですべてがこなせる。
 どの会社もどの中小企業も、多少のカスタマイズはあるにしても、ほとんどが同じ「仕組み」で仕事が進められているということだ。以前のように、その会社独自の仕組み・やり方というものが存在しなくなったし、またその必要もない。仕組みは、すべて汎用ソフトによって統一化され、共通化してしまった。
 コンピュータも初期の段階では、個々の会社のやり方に合わせるというカスタマイズ方式。過去から引き継がれてきたその会社特有の複雑仕様をそのままコンピュータに乗せるわけだから、カネもかかる、時間もかか
る。その上、トラブル続発で苦労したものだ。
 キャリアのある女子社員や仕組みを取り仕切る管理部門の先輩社員が幅を利かせ、機嫌を損ねようものなら、折角受注した売上も上げてもらえない。同じ問屋業でも、会社によって売上や利益の計上基準が異なる、なんてことも普通であったのだ。
どの会社も、業務に精通した古手社員さんが、「正社員」として必要であったし、こういった優秀な人達が会社の根幹を支えていたといっていいだろう。

●仕事は地球規模だ!
 パソコンは言うまでもなく世界を1つにするものだ。国を超えて、あらゆる地域で同じソフトが機能する。言葉の壁がなお存在するとはいえ、パソコンに打ち込んでしまえば、全世界が同時にその情報を共有することになる。いわゆる「グローバルスタンダード」だ。
 日本国内で流通する多くの汎用ソフトを遠く南アメリカやアフリカ大陸の果てで使用することも当然可能であり、この流れは一層加速するだろ
う。同じ業務であれば、なにも給料の高い日本でやることなない。コストの低い地域に向けて仕事は流れていく。
 すでに繊維製品の生産部門はその多くが海外に移転してしまっている。縫製業の方の話を聞く
と、もはや日本国内で縫製をするべき意味も理由も何も無いそうだ。ミシンを踏むことで製品の差別化はできないのだという。ただコストの低さを求めて、縫製の仕事は世界中にばら撒かれてい
く。
 パソコンによって情報は瞬時に世界中に配信できる。定型業務ともなると、これまた日本で仕事をしなくても、コストの低い国で仕事は完結できる。

●給与は上がらない!
 業務がパソコンで統一され、仕事が共通化してしまうと、正社員は不用となる。経験は企業にとって必要ではなく、た
だ、決められたことを律儀に、真面目にパソコンに打ち込める人材がいれば十分と言うことだ。臨時社員、パート社員、アルバイトで十分である。問題は、コストだ。
 現在、国会でも論議されている「格差問題」など政治的な駆け引きはともかく、正社員が減少し非正規社員が増加することは、当然のことなのである。危惧しなければならないことは、この先、国内の非正規社員が担当している仕事の多くが海外に流出することだ。
 コストが低くなければ利益が上げられない、競争は同業者間ではなく、地球規模の全世界にまたがるグローバルな闘いである。国内に仕事を残そうとすれば、必然的に日本の給与水準は低きに引きずられざるを得ない。
 反面、例えば中国人の給与が、日本人並みに上がることもないだろう。さらに低い国の給与水準の影響を受けることになるからだ。

●格差はさらに拡大する
 しびれを切らせた日銀が、金利を引き上げた。景気回復にもかかわら
ず、しかもその景気が長く持続しているにもかかわらず「デフレ」基調からは抜け出せない。デフレ脱却は、多分期待できないのだろうし、日銀や政府主導の景気対策などもはや〓世紀の遺物となっているのかも知れな
い。
 経済は、国際化ではなく、グローバル化なの
だ。
 多くの日本のビジネスマンが、今尚、熟読して止まない、かのドラッカー氏の描く「未来社会」が現実化している。バブル崩壊の陰で進展したIT革命で、日本の経済、政治、社会は一変していたといえるだろう。この変化はまだ緒に付いたばかり、予想もできない形が今後、現われてくるはずだ。
 格差拡大という事実が何をもたらすかは判ってはいない。
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2007/3/1掲載
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