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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)
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No. 46 |
“問屋”ブランドこそ財産なのだ。
消える商店街
問屋街に来街される多くの洋品店さんの数と全国の市町村の数そのものとは、恐らく比例しているのではないか、という一つの見方である。
前号の繰り返しになるが、地方自治体としての市町村区の数は、
明治維新直後は、約3万
太平洋戦争直後で約1万2千
1955年(昭30)には、ほぼ今日の形になって約3千6百 となり、
さらに、
2003年(平15)3千190、
2006年(平18)1,820と
この3年間で、1,370の市町村が消滅している。
特に、ここ直近3年間の市町村の減少に注目して欲しい。これからの数年間におよぶ来街者の減少を予告しているように思えてならない。
しかも市町村の数は今後も減少を続ける見込みと言われている。地方分権化の帰結するところは、市町村の統合を余儀なくさせるのだ。全国の市町村の数は、近々にも1千乃至は6百程度になるものと予測されている。
地域と産業の関係、財政と地方の持つ文化などの長年にわたる整合性が大きく崩れていく社会となる。
旧来の駅前商店街、歴史のある旧街道沿いの商店街などが、郊外の巨大SCに取って代わられるのは必然に思われる。
巨大化するショッピングセンター
東京を中心に次々誕生するショッピングセンター(SC)、その数にも驚かされるが、規模の巨大さには目を瞠らせるものがある。丸の内、日本橋再開発から六本木ヒルズ、原宿へ、さらに東京ミッドタウンがこの3月末にオープンした。
施設の完成と共に近隣都府県の消費者が殺到、すくなくとも3ヵ月(当てずっぽうの期間ではあるが)はどの店にも長蛇の列ができる。当然、施設内のショップは、商品そのものからVMD、カード決済方式に至るまで最新の手法が用意されている。
トイレの設備から顧客の誘導・サービスまで、さらに館内の休憩所などお客様を飽きさせず、満足させる機能が一杯だ。それでも“気まぐれ”消費者は多分、多くの不満を抱えてご帰還になる。とにかく広すぎて、その上の人並みにウンザリさせられるのだ。
消費者は、それでも新しいSCの誕生を待ちわびているのだろうか、と心配にはなる。
これからも八重洲口再開発などの巨大計画は目白押し、巨大施設が各地に林立する。
圧倒的大差で“オリンピック誘致”の石原知事が再選された。その是非はともかく、オリンピックのための施設造りはこれからだ。さらなる新しい施設が別途計画され、次々と実現されるだろう。
“東京から日本を変える“知事が、さらなる東京一極集中に拍車をかけることとなる。
格差は急激に進行する
これからもあらゆる局面で格差は生まれ続けるだろう。巨大施設間同士の競合も熾烈だ。膨張に膨張を重ねていくことが、結果として多くの格差をもたらす、取り残される地域が続出することは目に見えている。
まだしばらくは東京を目指して地方からの人口流入は続くだろう。しかし、少子高齢化という絶対的現実は、いずれ無視できなくなるはずだ。限界が来る、ということは多くの人達に十分に認識されている。でも、現時点での巨大化は止まらないし、止められない。
巨大小売業として、長年にわたり歴史的に多くの小売店から「ノー」を突き続けられてきた百貨店が、その存亡の時を迎えている。巨大SCの“核”となり損ねた、というより業態そのものがすでに時代に合わなくなってきたと言えるだろう。
百貨店の存在自体が、今後どうなるのか不透明となってきた。大丸・松坂屋統合など、今まで誰もが予測し得なかった事態が起こっている。伊勢丹を核としたグループも新しく生まれつつある。元々、伊勢丹は自社の店舗展開も進めつつ、商品面を中心に地方の名門百貨店に支援の手を差し伸べてきた。しかし、それらの事例の中で「上手くいった」試しはない。それでも伊勢丹に擦り寄らざるを得ない百貨店業界の現実がある。
グローバル小売業化を目指すイオン・グループも決して例外ではない。
「新・繊維ビジョン」の可能性
日本は国内市場に大きな可能性を秘めてきただけに、すべて国内のみの限定での施策が打たれてきた。繊維産業再生のための自立化支援事業も、基本に「アパレル抜きの、生産メーカーによる小売直販」軸がある。このことが理論的に間違っているとは言い難いが、結果として支援事業の行き詰まりをもたらしたと言えるだろう。
自立化支援事業も本19年が最終年度。一時は、繊維産業支援打ち切りが取りざたされたが、結局は経済産業省の面子からか、新しい「繊維ビジョン」が策定されつつあると伝えられている。
繊維産業の多くは、いわゆる中小・零細企業で構成された産業である。もう国内市場にこだわることなく、世界に向けての事業活動を支援すべき時ではないか。ファッション大国フランスの繊維関連企業で、自国内をマーケットに考える企業は稀と聞く。世界がマーケットなのだ。
ファッション先進国の一つ、日本も遅まきながら世界を相手にする時代を迎えているのではないか。国内マーケットでの鍔競り合いに体力を消耗する時代は終わったと言えるだろう。
時代を解く鍵は、
「グローバル化」
である。
「問屋街」は有力ブランド
週刊誌などで話題となった「星野ジャパン」ブランド。
どちらかと言えば批判的意見が多く、商標登録を断念したのかどうかは不明であるが、時代を解くもう一つの鍵は、
「総資本主義化」
である。すべてが「ブランド」化できる時代である。オリンピックですらコマーシャリズムで運営される。マラソンも水泳も、プロ化されていないスポーツの多くが、今やテレビ広告などのメディアに登場する。
古いイメージで「問屋」を語る時代もあったが、業種・業態が混迷化した今日、誰にでも判る、理解される「問屋」が多くの支持を集める時代と言えるだろう。すでに、「問屋」という言葉に新鮮なイメージを抱く若い学生に出会うことも稀ではない。ネット業界の先進的企業でも、明快に「問屋」を標榜することで学生の人気を集めている。
「問屋」「問屋街」を、人気ブランド化させる使命が、ここ問屋街にあるのではないか。新しいプロジェクトをスタートさせねばなるまい。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2007/4/20掲載 |
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