今塾 by 今宿博史 - 営業戦略おもてなしショップ - IMAJUKU by IMASHUKU Hiroshi
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宿屋四郎兵衛
「パワフルワンポイント」
(2005.5.20〜2007.6.1)

No. 47-1
“気まぐれ”消費者の判断は怖い

戦慄の長崎市長銃撃
 4月の統一地方選挙における長崎市長射殺事件の真相がどこにあるのか、なお混沌の様相を呈している。
 選挙戦最中の惨劇だけに多くの憶測を呼んでいるのであろうが、いわゆる「クビ長」を巡る深い闇の深さを改めて考えさせてくれる。そもそも射殺された長崎市長、今回が4選目という。いくら名市長、人望があり、この人をおいて他に人がいない状況であろうと、いかにも16年間は長過ぎないか。最も、このことが惨劇の原因ではないが。
 東京都石原都知事のような「揺るぎない」圧倒的な知事であっても、3選12年は長過ぎる印象を与える。ご本人に一点の曇りがなくても、側近、周辺にいろんな疑惑が渦巻いてしまう。オリンピックを引き出物にして、延命策を企てたのではないか、などいらざる腹を探られることになる。総理大臣ですら一目も二目も置く石原さんも今回は多くの批判にさらされた(結果は圧勝であったが)。黒川候補の攻勢に石原さん、たじたじの場面も数多くあった。なぜ3選なのか。
今回の選挙結果は、 “気まぐれ”消費者が、決して単なる気まぐれでないことを証明した。浅野候補を始め、他の候補にも惜しみない一票が投じられたように感じられる。
しかし、石原さんであるからこそ、都知事は2選までとする英断を期待したいところであった。

長崎市民の選択
 長崎市長選挙結果で何より驚いたのは、急遽立候補した現職市長の娘婿が、僅差とはいえ、これまた急造の候補者に敗れたことである。長崎市役所勤務の現役課長さんが選出されたという事実である。
 過去の事例を引くまでもなく、こういった悲運に見舞われた候補者に代わって、急遽立った妻、息子等の親族のケース、多くの同情票で大勝するのが常であったように思う。しかし、今回は違った。長崎市民は、悲しみは悲しみとして受け止めつつ、現職市長に代わるに相応しい候補者を選出したのである。娘婿さんも優れた人材であったろうが、より市民に近い候補に一票を投じたのであろう。素晴らしい選択であったと言えるだろう(もちろん数年後の評価はまた別なものになるだろうが)。

注目されるクビ長
 国政の場と異なり、ここ数年異色の「クビ長」が登場する。衆院、参院における陣笠議員とは違い、クビ長は、県、市町村のトップ、まさに一国一城の主。その見識、実行力は並みでは務まらない。さらに、その権限は絶大なのである。
 そのクビ長、今までは4選、5選がザラ。大した業績もないまま、徒に年を重ねたクビ長が多かった。必然的に批判の対象ともなる公共事業等を巡っての疑惑が囁かれてきた。岐阜県や和歌山、宮崎県等記憶に生々しい。
中には、知事として著しい業績を上げたことで知られる浅野宮城、北川三重、田中長野県知事等、評価は分かれるものの、マニフェストを通して異色の人達が地方クビ長には強大な権力が存在することを示してくれた。

21世紀のリーダー像
そして、東国原知事の登場である。過去話題となった青島東京都、横山ノック大阪府知事とは同じ芸能人出身ながらそのキャラクターは、ハンパではない。プロの「仕事人」そのものだ。何かやってくれそうな魅力に満ち溢れているかに見える。
スキャンダラスなイメージを孕みつつ「宮崎の営業マン」としての八面六臂の活躍が、今後いかなる影響を宮崎県政にのみ止まることなく、全国に波及していくか計り知れないものがある。メディアを存分に引き付けた政治手法など、過去の政治家を遥かに凌駕した戦略であり、そこには、明らかに21世紀型リーダー像とも言うべきものが垣間見える。
ガラス張りの知事室は、田中長野県知事の発案であったが、知事室を宮崎観光ルートに取り込むという東国原流の情報開示施策も多くの注目を集めるはずだ。コミュニケーション戦略に長けた人材でなければリーダーは務まらない時代でもある。
21世紀型とも言うべき新しいリーダーの誕生に“気まぐれ”消費者は、高い関心を示しはじめているのである。

情報開示の必然性
 石原都政に、最大の批判を浴びせ続けた浅野候補は、徹底した情報開示型の政治家として定評がある。選挙には敗れたが、この批判は石原さんには厳しいボディーブローとなって、今後の都政運営にかなりの影響を及ぼすだろう。「側近政治」型手法など、もはや通用するはずもない。
 トップであるからこそ許されるであろうと考える“隠す”論理は、今や通用しなくなってきている。“気まぐれ”消費者は許さないのだ。石原都知事のアキレス腱も実はこの点にあった。都民のことを最も考えているのは自分だ、世界を動かす名だたるメンバーとも親しい、名前の出せない要人とも会っている、すべて東京のためだ、これくらいのこと許されるだろう。しかし、政治に「隠蔽」体質はもはや許されない。
 すでに、ビジネスの世界では、“隠す”ことは犯罪である。あらゆる面で情報開示義務が強調され、またインサイダー取引が厳しく指弾されることは周知の事実である。情報が一部の特権階級・組織のトップのものであった時代は終わっている。関係するすべての構成員が同じ情報を共有しなければならない時代でもある。

コミュニケーション戦略
 関係するすべてのメンバーが、同じ情報を共有し侃侃諤諤、論じ合う。ここに真のコミュニケーションが生まれる。「衆愚政治」=民主主義である。一つの課題に、いろんな意見が入ってくる。夜を徹して議論をするうちに、ドンドン議論が集約化されていく。時間もかかるし、根気もいる。これが、コミュニケーションの本質だ。
 ビジョンが生まれ、改革の方向が定まり、達成すべき課題が一人ひとり明らかになっていく。コミュニケーションがしっかり浸透していく。一部のリーダーが情報を隠しているのではないか、との疑心暗鬼に陥る余地が無い。
 指図されるのではなく、自然と体が動いていく。隠し事がなくなることで、無理、無駄が無くなる。真のリ・エンジニアリングが達成されるのだ。
 “気まぐれ”消費者を味方にしない限り、政治もビジネスも「勝ち」はない。彼らは「隠蔽」体質を極度に嫌う。プロ野球界の「新・黒い霧」事件も同様だ。「こんな事暴いて何になる」と発言するプロ野球のドンには、所詮グローバル化が理解できない。
 商店街活性化も全員参加の「三方良し」でなくては成功することはない。
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2007/5/1掲載
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