今塾 by 今宿博史 - 営業戦略おもてなしショップ - IMAJUKU by IMASHUKU Hiroshi
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宿屋四郎兵衛
「ずばり!単刀直言」
(2007.6.20〜2009.5.20)

No. 10
“現場力”は、“問屋力”のリニューアルで

主張する問屋街
 どの組織・集団もこのグロバリゼーションの時代においては、その存在理由を明示しなければならない。消費者をターゲットとする企業においてはなおのこと組織・集団の存在理由は明らかでなければなるまい。
 主張のない組織・集団は早晩消滅の運命にあると言えるだろう。
 過去のわが国にも存在したような安定期の社会においては、存在することだけ、そのことに意義が見出せた時代もあった。しかし、今日ではそんな存在は、まず許されるものでないことを認識したい。内向きの閉鎖的組織では社会の認知が得られないのだ。
 問屋街の存在を知る人は、現在、かなり減少してきていると見なければなるまい。今なお、問屋街から何らの情報を発信しなくても“知る人ぞ知る”ことに意義があると考える人も稀ではない。まだまだ、わざわざこちらから情報を発信しなくても“商品の欲しい人が尋ねて来てくれる”ことも、実際に皆無ではあるまい。
 とは言いつつも、そろそろ問屋街として何らかの情報を広く発信、主張すべき時期にきているのではなかろうか。とくに、現金問屋の持つ構造的特性、また仕入れを行う小売店にとってのメリットを明確に発信すべきではなかろうか。
 問屋街との取引にはこんなにもメリットがあるのだ。

業態としての現金問屋
 業態としての現金問屋の特性は、
「仕入れする者(小売店)が仕入先に来て、自分の目で見て、さわって、必要とする量だけを現金で購入する店頭販売方式だ。いわゆるキャッシュ・アンド・キャリーの卸売業態」
である。
したがって、現金問屋では、来店する不特定多数の小売店が顧客であり、あくまで店頭現金販売を原則として、掛売、手形決済などの信用取引はしない業態である。
対して、一般の卸売業は固定した販売チャネルで(取引口座がある)、営業マンがルートセールスとして巡回する業態であること周知の通りである。
いま、現金問屋の特性を、すべての小売店が承知しているわけもなく、また新規に創業を目指す若い人材がこうした現金問屋の機能を十分に活用しているとも思えない。現金問屋側からも、もっと手を伸ばして多くの小売店に問屋街のメリットを享受してもらう必要があろう。

現金問屋の魅力
 現金問屋の持つ資源、特性をいくつかの視点で挙げて見る。

【1】商品と情報の強み

 仕入れする人が自分の目で見て、さわって、購入を決める。ネット販売では絶対に不可能な仕入れ機能である。
(1)単に商品が仕入れられるというだけでなく、商社側からの「売れ筋情報」等、“旬”の動きが手に入るメリットが大きい。また、来街して商品を見て歩くだけで多くの情報を得ることができる。小売店にとって、こんな情報の宝庫をほって置く手はないのである。
 今日見た問屋の陳列が、明日のあなたの店で陳列に活かせることになる。何よりこの魅力だ。
(2)「昨日売れた売れ筋商品が、問屋街なら今日手に入れることができる」という商品力だ。
 現金問屋街活用の最大のメリットは、シーズン中の商品が用意されているということにある。たとえばこの2月、多くの百貨店やファッションビルでは春物の展開真っ盛りだ。だがこの品揃えでは、気温の急変に対応できない。
 しかし、問屋街に駆けつけてくると「冬物衣料」がしっかり天候に合わせて用意されている。問屋街の面目躍如ではないか。
(3)また、中小小売店にとっての倉庫機能の役割もあるだろう。当然のことながら、中小のお店にとっては、資金の都合もあり仕入は少量、多頻度となる。現金問屋との取引は中小小売店の経営に多大の貢献をすることになる。

【2】取引関係が明快

(1)新規創業の小売店、また、はじめて問屋街で仕入れをする小売店にとって現金問屋の取引関係は、まことに心地よいものとなるはずだ。取引関係が明快だからだ。
 創業・起業間もない小売店にとって、問屋街ほど役立つ仕入先はない。
 店頭現金決済であるため、信用供与もなく、その場で取引は完結してしまう。返品や苦情、取替えの心配もまず発生しない。来街仕入れのために持ち帰りが一般的ながら、今は配送業者が容易に運んでくれる。もちろん量的にまとまれば商社が代行してくれることもあろう。
 固定客化すれば、電話やファックス受注も受けられるだろう。
(2)また、各商社の店頭販売員は、こと商品にかけては、プロ中のプロだ。店内の在庫を通して、フェース・ツー・フェースで直接の商談ができる。
 現金問屋はいずれも商社であり、店頭にはプロの販売員が配置されているため、創業間もない小売店にとっては応対がいささかぶっきらぼうで、戸惑うこともあろう。しかし、そのことはプロのバイヤーと見られた証と考えるべきだ。
(3)小売店の後継者、社員、創業を考えている人達にとって、最高の現場教育の場が問屋街だ。
 改めて推奨するまでもなく意欲ある多くの小売店さんは、実にこまめに問屋街を回っておられる。

【3】圧倒的立地のよさ

(1)馬喰横山問屋街の立地のよさは圧倒的だ。このメリットが今日まで問屋街を繁栄させてきた最大の理由であるとは言い過ぎであろうか。
 小売店にとっても利点が多い反面、問屋街に売り込みに来る仕入先メーカー各社にとっても大きな魅力であるはずだ。売れ筋商品が集まる。
(2)この立地が、問屋街の“のれん”を創り上げ、また由緒ある多くの卸企業を輩出してきたといえるだろう。
(3)問屋街の魅力として主張しなければならないのは、なんと言っても関連業種の集積度が極めて高いことだ。
 この界隈には、繊維雑貨卸商社がおよそ500社あるとみられ、(協)東京問屋連盟、あるいは横山町奉仕会に組織化されている。
 商品の集積度において、近年はネット販売がその威力を存分に発揮しているが、その機能上の制約からも商品の集積度で問屋街の足許に及ぶところではない。

問屋街発展の方向
 このことは、ネット販売の脅威を侮るのではなく、商品力に勝る問屋街が、ネット販売の利点を徹底的に活用し、さらなる商品の集積度を高めていくならば、その実力は恐るべきものに転化していくであろうことを暗示しているのである。
 立地上の優位性、“のれん”の重み、小売店を支える品揃えの良さ、明快な取引関係、等々、どれをとっても問屋街には魅力が溢れている。これからの21世紀型ビジネス・モデルといっても過言ではないだろう。

東京問屋連盟:問屋連盟通信:2008/2/20掲載
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