今塾 by 今宿博史 - 営業戦略おもてなしショップ - IMAJUKU by IMASHUKU Hiroshi
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宿屋四郎兵衛
「ずばり!単刀直言」
(2007.6.20〜2009.5.20)

No. 11
現場力”で、“商売流儀”のメッセージを

問屋街の“メッセージ”
 (協)東京問屋連盟60周年の今年、改めて問屋街を考えて見たいと思っている。
 問屋街の持つ幾つかの魅力については、前号でも触れた。小売店にとってこんな便利、かつ有効な仕入れ先は他には存在しない、と言い切っていい。最近は、ネットによる仕入れが良いと断言する小売店の方も増えつつあるのも事実だ。また、ネット仕入れの効果的なことも否定するものではない。
 とは言えこの問屋街が、いくらJRや地下鉄による交通至便の場所にあると言っても、全国津々浦々の小売店に満足な仕入れを約束することは物理的に不可能なことは言うまでもない。各地域にある卸・問屋街やネットの活用は、多くの小売店で検討され、また実現されているはずだ。
 だからこそ馬喰町横山町問屋街は、他では手に入らない、別の機能、魅力を磨いていかなければならないのだ。もはや歴史・伝統がある、古くから小売店の信頼に応えてきた、というだけが、この地域の存在理由にはならない時代であり、この傾向は年々一層の高まりを見せてきていることは普段の商売の中で感じられているはずだ。
 自社だけが、しっかり堅実にやっていけばいいのではなく、問屋街全体の、一丸となっての行動が求められるのだ。
 問屋街からのメッセージを明確に打ち出す必要が生じているのではないか。

問屋街って、何?
 “問屋街って、なんですか”、多分、そんな問いかけを受けた人は決して少なくはないはずだ。何の気なしに使う問屋街という言葉、また馬喰横山と言えば知らぬ人などあり得ないとの思い込みの中で、この地域で商売が行われ、そして経営が成り立っているのだ。とりあえずこの地域に卸を開業すれば小売店が仕入れに来てくれるという安心感は大きい。
 問屋連盟での無料経営相談に応じていると、まだまだ小売店を開業しようと思ったら、まず馬喰横山に行って見ないと、と考える人が多いらしい。
・「小売店を創業したいのでやって来ました」
・「開店までにどのような手続きをするのですか」
・「商品の仕入はどうすればいいのか教えて欲しい」
・「誰かに馬喰横山に行くように言われて来たのですが、どのように仕入れをしたらいいのですか」
・「敷居が高い感じで、店員にどのように声を掛ければいいのか判らなくって」
・「声を掛けたけれど返事をして貰えなくって」
・「入口の張り紙が気になって」
・「自分を証明するものが必要ですか」
等々、問屋街を歩いている人の中にもハッキリした来街目的がありながら「どうしようか、どうしようか」と迷っているうちに、結局、電車に乗ってしまう人が意外に多いのにビックリする。でも、一度は見ておきたい、プロの仕入れを実感しておきたい、との願いは強い。

問屋街の商売“流儀”
・「小売をいたしておりません」
・「素人さんにはお売りいたしません」
にビビってしまうのが、気の弱い今の小売店開業予備軍の特徴かと思ってしまう。
店内の従業員の対応も、当然ながら一般の小売店の店員さんとは異なり、商売人相手のビジネスが前提だけに「冷たく、無愛想」に受取られてしまう。これが問屋街の長年の信用を形作ってきた大きな要因の一つであるだけに否定することはできまい。でも、もう少し「聴いてあげる」という姿勢があってもいいのではないか。
一般消費者に見えても、それは小売開店を夢見る自社の未来のお得意さんである可能性もあるのだ(もちろん全員ではないだろうが)。忙しくってそんな人に付き合ってはいられませんよ、との姿勢ではなく
・「小売はしていませんが、商品はゆっくりご覧ください」
くらいの一言に小売店開業予備軍は救われるのだ。   
“暖かさの感じられる街”である必要があるのではないか。
 小売業は消費者に夢をもたらし、そして生活を豊かにするビジネスであるべきと念じている。大規模チェーン店展開による「ローコスト・高収益」経営という消費者の利便性を謳いながらも、自企業の徹底的利益追求を目指すビジネス・モデルがすべてであってはいけない。

小売店を育てる問屋街
問屋業である以上、顧客となる小売店をセレクトする必要はない。
大手百貨店であろうと、有力GMSや駅ビル・ファッションビル出店の今をときめく有名ブランド・ショップであろうと、それら有名店との取引がこの問屋街で行われていることで問屋街のメッセージ性は高まり、さらに一層有名店バイヤーを惹き付けていくことになる。
あそことこの会社は、あの著名ショップと取引している。この事実は、問屋街からのメッセージとしては最高のものだ。
それと同時に、あるいはそれ以上に今後世の中に送り出したい問屋街からのメッセージは、
“小売店を育てる街”
としてのメッセージではないかと期待している。
 今でも、「小売店を始めるには、馬喰横山に一度は行っておかなくっては」との世間一般に何となく漂う“空気”を途絶えさせてはいけないのだ。
・「あの街にいけば何とかしてくれる」
この期待感を現実のものにしてあげる「暖かさ」は、新たに何がしかの投資を必要とすることではなく、日々の来街者に対する「暖かな」一言で足りるのだ。
・「当社・当店は小売店様の仕入れを支援しています」
・「当社は小売店様のための店舗です」
 など、個々の企業での工夫があってもいいだろう。

「KY」(ケーワイ)
 空気の読めなかった「KY内閣」の退陣で、全国的に一気に広がった「KY式ローマ字略語」を借りれば、問屋街を訪れる小売店予備軍の多くは「KY」族が多数である。
問屋街の仕入れには一種独特の“流儀”があることをほとんど知らない。ただ戸惑うばかりである。中には、勇気ある予備軍が、問屋連盟会館3階の受付にお見えになるが、それは一部に過ぎないと言えるだろう。
果たして、今の「KY」のままでいいのか、という点に不安を感じる。誤解を恐れずに一言付け加えるならば、案外に「KY」であるのは、問屋街側であるのではないか、との疑念である。
無料相談にお見えになる“一見さん”にとって、この街は冷たいと受け止められている。当然ながら、個々の企業には経営方針があり、小売店への対応にも格差があるだろう。また、あっていい。そのメッセージをきちんと伝えなくてはなるまい。
「KY」のままの問屋街であっては、いつの日かその輝きを失うことになる。
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2008/3/1掲載
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