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宿屋四郎兵衛
「ずばり!単刀直言」
(2007.6.20〜2009.5.20)
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No. 18 |
“不況期こそ、現場力を発揮する時”
遂に来たか!
景気が悪くなる、なんてことはとてもじゃないが言いたくもない。
しかし、この「直言シリーズ」でも何回かこのテーマを取り上げた気がする。なんとなく「オオカミ少年」の心境ではあるが、景気なんてよくなれば必ず悪くもなるものだ。とは言いながら、どうも景気のアップダウンの波動が確実に、そして全体が悪化する方向に大きく傾いてきていることが気にかかる。
政府の鳴り物入りの景気回復声明にも関わらず、変だ、変だと思った中小企業の経営者も多かったはずだ。
しかし待てよ。これだけ政府が「回復した」と声高に言うのだから、悪いのはひょっとしたら、当社だけではないか、この問屋街だけが悪いのか。いや、隣の会社、本当は良くなっているのに調子を合せて「ダメですね」と言っているのではないのか。ついつい疑ってきた。
それにしても、昨年9月以来、やはり「潮目が変わった」のか。このことを、実感を込めて話す卸売業・小売企業の経営者がとにかく多い。一体どうなったのであろうか。
この「潮目」の変わりようは、5月の店頭実績で決定的となった。6月に入っても不振は続く。6月初の数日間、有名ブランドショップの実績店ですら、シングルの売上げが続出したという。「ゴルフじゃないんだ」、こんなこと、ここ10年以上経験したことがない、とあきれ顔。
6月後半から7月にかけては、早くも「セール」の時期だ。プロパー販売のチャンスを逸することのないように、小売店トップの日々の手綱捌きが問われるところだ。
景気後退の可能性示唆
内閣府が9日に発表した4月の景気動向指数(速報)は、現状を示す「一致指数」が前月より低下したという。
内閣府は、指数による基調判断を「局面が変化している可能性がある」に変えた。
02年2月に始まった戦後最長の景気拡大が終わり、後退局面に入った可能性があることを示す表現だ、と朝日新聞は論じている。
景気拡大局面を牽引してきたのは大企業の輸出や設備投資であることは周知の事実。内需中心の企業や多くの中小・零細企業の業績、あるいは小売市場が一向に上向かないことに政府は無策できた。むしろ、消費が回復することに水を掛けるような政策・施策、さらには発言が残念ながら頻発した。
大企業さえ良くなれば、後は自然と良くなるとの「成長戦略」は、小泉政権以来の論法だ。
企業経営者の景況感も悪化を続けている。業績も厳しさを増してきた。背景に「第3次石油危機」がある。東証1部上場企業の53%は、08年3月期決算で減益となった。
街の景況感も悪化した
これも内閣府発表の5月「景気ウオッチャー調査」。足もとの景気認識を示す現状判断指数は、2か月連続で低下、内閣府は「景気回復の実感はきわめて弱い」との判断を3か月続けている。
別段、内閣府に調べてもらわなくても、問屋街の多くの商社や仕入れ客の皆さんに聞いてくれた方が正確だよ、との声も聞こえてきそうだ。
国民の多くは、安倍内閣に続く福田政権もどうも 「KY」ではないか、と疑い始めているふしがある。
このウオッチャー調査、景気に敏感とされる商店主やタクシー運転手が対象となっている。身近な品物の相次ぐ値上げに加え天候不順も加わった。何も家計関係だけでなく、原油・原材料高騰で企業関係の指数も悪化している。
「気温が一時的に上がってブレーキがかかり、その後寒さが戻ったため夏物も動かない。来客数が驚くほど落ちた」という東北の衣料専門店を朝日新聞が記事にしている。
それにしても小売りが悪い。当然それに関係する卸売業が、また悪い。ただ、バブル崩壊以来の学習効果もあって、どの企業も在庫面での切迫感は薄いようだ。
せめてもの救いか。
弱かった「売る」仕掛け
繊研新聞6月5日朝刊では、「百貨店/専門店5月商況・大半が前年割れ」が一面トップに踊っている。
記事は、「4月に続いて、5月も前年割れを強いられた」と食品やガソリンの値上げ、先行きへの不安感等の消費の冷え込みが前年割れの原因と極め付けているようだ。そして、総崩れの中でも際立つのが、ユニクロの伸びと指摘している。
ユニクロ躍進の原動力は、商品企画と販促、店頭が一体となった「売るための仕組み」にある、と同紙は分析している。ユニクロは、消費者をしっかり捉えているのだ。
小売業や卸売業である以上、独自の商品企画・販売企画、さらには店頭の「仕掛け」なしで売り場に活況をもたらすことなど、今日あり得ないことは、当事者である小売トップの誰もが承知していることだ。それでも目先の売上げに振り回されて、現場は肝心の施策・善後策を後回しにしてしまう。
これでは、いくら失敗を重ねてもスパイラル化した“蟻地獄”から抜け出すことはできない。厳しい、厳しい、と言っているうちに年間52週間は何事もなかったかのように無情に過ぎ去るだけだ。
しかも、今年の夏商戦も「マークダウン」から「バーゲンセール」、「一掃セール」へと年間スケジュールに沿って流れていくだけだ。
店頭はデスクワークじゃダメ
問屋街各社トータルの売上実績は、数値として捉えられていない。残念なことではある。したがって、個々の商社のように、前年との比較をすることはできない。活性化されたのかどうか、問屋街としての努力を測る手段がない。
確かに、感じとしては問屋街の仕入れ客の多寡からの推定(長年見続けてきたという問屋街オーナーの目、勘というやつ)も決して誤ってはいないだろう。
しかし、せめて問屋街への来街者の数字が定期的にカウントされていれば、と惜しまれる。手が打てるのだ。
これからのビジネスは、常に“新鮮”であるべきなのだ。これが顧客の感動を呼び、消費につながっていく。同じことの繰り返しでは、顧客が付いてこない、すぐに飽きてしまう。その前に“アキンド”が飽きてしまっては商売失格だ。
商品だけではなく、「仕掛け」そのものにも新鮮さが求められる。商品も、什器もVMDも、消費者をあっと言わせる仕掛けのプレゼンが、小売店を再生させるのだ。リアルショップとしてのメリットをふんだんに打ち出したい。
問屋街個店の現場力が問屋街を変えていく。そして、顧客である小売店を変えていく。問屋街・小売店共に、その力はまだまだ十二分に存在しているはずだ。
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東京問屋連盟:問屋連盟通信:2008/6/20掲載 |
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