|
|
宿屋四郎兵衛
「ずばり!単刀直言」
(2007.6.20〜2009.5.20)
|
No. 36 |
ファッションの元気が次代を創る
54,000人の動員力
“東西のファッションフェスタ”に54000人が集結!
「不況なんのその!」
「7、8日の2日間、東西で行われた東京ガールズコレクション(TGC)、神戸ガールズコレクション、渋谷ガールズコレクション(SGC)のファッションフェスタで計約54000人超が来場した。
単純に“ファッションは楽しい”という気持ちを改めて思い起こさせた」(繊研新聞3/10号)
同紙によると、「TGC=洗練、SGC=勢い、神戸コレ=過去最高」とある。
「ファッションは楽しく面白い」ーステージの演出、客の盛り上げ方、協賛ブース回り、モバイルなどへの情報の届け方など、ブランド側も来場者も慣れてきた面があるという。個々がそれぞれに楽しみ、その中でストーリー性やテイストに共感し、新しい可能性を見つけ、ファンになっていく」という。
消費低迷とファッションの楽しさとは別のものなのだ。ファッションは人々を楽しませ、消費者に明るさを生み出させる力を持っている。
国内最大級のファッションイベント
TGC(東京ガールズコレクション)は、今や日本最大のイベントと言ってもいい。
一時、多くのメディアで喧伝された「客席からモデルの着ている服をケータイで買える」ことで知られるアレだ。今回で8回目、若い女性への訴求力は抜群で、自動車や食品などの異業種が新商品の認知度を短期間に高めるための手段としてTGCを活用している。
今後も、より多くの異業種がこのイベントに参加してくるだろう。
たとえば、メガネフレームの地場産業福井の鯖江市も今回初参加した。
トヨタ自動車と中堅アパレルの新ブランドお披露目を演出したのは、TGCを企画運営したブランディング(旧ゼイヴェル)だ。
確かに、「F1層」と呼ばれる20〜34歳の女性に圧倒的知名度を持つTGCへの販促効果に期待する企業は実に多い。
裾野形成するメルマガ
注目すべきは、イベント会場に来場した2万人に止まらないことだ。
ブランディングは、メールマガジン会員720万人を擁するケータイサイト「ガールズウォーカー」も主宰している。ケータイサイトとテレビ・雑誌の取材を通じたクロスメディア効果は計り知れない。
明らかに従来の百貨店やGMS、ブティック等を通じての販売チャネルを超えた時空での商談が行われていることになる。従来型の集計が叩き出す需要の低迷・後退とは異なる商品の流れを無視することはできない。
馬喰町横山町問屋街にも、こういった流れを感じることができる。
新しく出店される企業(ショップ)の斬新さ、奇抜さ、そこで働く社員達の生き生きとした動きこそが、これからの問屋街を作り出し、顧客である小売店の活力を生み出すはずだ。
今後は、異業種との融合、提携を企図した試みもTGCから学びとらねばなるまい。
ジャパン・ベストニット・コレクション開催
「世界へ発信する日本発のニット製品総合展」と銘打っての、日本発ベスト・ニット製品の総合展だ。
東京国際フォーラムでこの3月12、13日に開催される。経済産業省、中小企業基盤整備機構の支援を得て、日本ニット工業組合連合会などの業界団体が後援をする。協賛企業として、島精機製作所の名前が出ている。
出展企業は、ニット、カットソー、靴下の3分野で、それぞれの有力製造企業だ。経済産業省が過去5年に亘って進めてきた中小繊維産業自立化支援事業を新たに発展させたイベントと思われる。
キャッチ・コピーには、
“全国各地から選ばれた出展者がオリジナリティ溢れる製品を創出、ご提案させていただきます。
こういった不況期だからこそ、国内に目を向け、日本製ニットのクオリティーの高さを改めて実感してください!
皆様のご来場をお待ちしております!! ”
とある。
(この号が出る頃には終了しているので、見に行かれた方もおられるだろうと思う)
業界イベントの限界
来場者は、アパレルメーカーや百貨店、GMS、専門店などの、いわゆる従来型取引先に限られたものである。
従来型イベントの典型で、日本に残る優良繊維製造業が作り出す“メイド・イン・ジャパン”の本当の良さ、すばらしさを改めて百貨店始め従来のバイヤーに見て、感じて買ってもらおうという企画だ。
企画そのものを否定するものではないが、そろそろ経済産業省主導のこういったイベントも見直す時期にきているのではないか、と心底感じる。
繊維産業支援、中小企業支援政策が、決して無用であると論じるつもりは毛頭ない。むしろ、小手先の支援策ではなく本腰を入れるべき政策に転じる時が来ていることを切実に感じる。
また、業界自体も安易に(とは言えないが)お上頼みの姿勢を改める時期を迎えているのではないか。予算があるからやると言っても、その金の出所は税金であり、無駄と言われないために、無用のものでもやらねばならない。
リーダーシップは、お上からではなく現場からの発想に立つべきなのだ。
ニューウエーブに注目
地方有力都市の商店街がハードのみは立派になったものの、肝心のソフトが未整備で、かつ地域の消費者の支持を得ていないこともお役所仕事の重大な反省点であるはずだ。
因みに、経産省のお声係りで成功した試みは皆無と言っても言い過ぎではない。国の税金が使われることによって、役所は仕事をしたことになり、また、この恩恵に浴した企業が存在することもない訳ではない。役所と結びつくリーダー企業のメリットもあるのだろう。しかし、その事業が、永い目で見て本当に業界の、また消費者のためであったのかは疑問であろう。
繊維産業全体に対して、またファッションに対しての様々な支援策も、地鳴りの如き新しい世代の思考や行動の方向性を的確に捉えているとは考え難い。
アラウンド・フィフティ(50歳前後世代)
新しい風は、何も若い世代だけではない。日経MJ紙の調査によると、子供の養育費などの家計負担がのしかかる世代(「アラフィフ」)にも関わらず、15%が新しいライフスタイルを切り開きたいと願っているとの結果が出たという。
消費意欲旺盛な「先端アラフィフ」が、今後はアラフォー(40歳前後)を超える消費関連企業の上顧客となり得るのでは、と提言している。
アラフィフ世代の総人口は、約930万人。その中で消費意欲旺盛な先端派は、単純計算で約140万人を占める。
景気低迷、不振とファッションは無縁の時代が来たのだ。
|
東京問屋連盟:問屋連盟通信:2009/3/20掲載 |
|
|